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『夏の滴』単行本表紙(初版バージョン)

『夏の滴』単行本表紙(初版バージョン)

『夏の滴』単行本帯-表面(初版バージョン)

『夏の滴』単行本帯-表面(初版バージョン)

『夏の滴』単行本帯-裏面(初版バージョン)

『夏の滴』単行本帯-裏面(初版バージョン)

夏の滴

Natsu no Shizuku,2001

作:桐生祐狩

Written by Yukari Kiryu

長編

角川書店/本体1,500円+税

単行本初版:2001年7月10日/総356ページ(46w×20L)

新書本初版:−

文庫本初版:2003年9月10日

消えてゆく同級生たちの謎を追う夏休みの冒険行
第8回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作

 夏休みが始まる。N県の小学4年生、藤山真介、徳田芳照、河合ゆみらは、親に内緒で上京する計画を起てた。失踪した同級生一家が東京で見つかったのだ。
 折しも地元テレビ局NBNから毎年恒例の撮影班がやってくる。車椅子生活を送る徳田を主人公にしたドキュメンタリー番組を撮影するためだ。
 美貌レポーターの江上理沙子は謎めいた行動をとり、同級生たちの暴力的ないじめに遭っている女子の八重垣潤が流行らせた「植物占い」は学校側より急遽禁止令が出される。市の財政破綻、消える同級生、突然裕福になる大人たち。
 保護者を買って出た江上とともに東京へ出かけた3人は、かつての同級生、桃山ヨハネ宅を訪れる。借金苦で夜逃げ、という噂とはうらはらの豪邸に忍び込んだ3人だったが、気味の悪いネバつく液体で満たされた瓶を発見するのみだった。
 大人たちは、なんらかの理由で子供を殺しているのか?
 江上や謎の青年の助力を得て真相に迫る3人を待ち受ける驚愕の真実。

 荒俣氏が選評で「瑞々しい少年小説(左上の帯裏面参照)」と述べているけど、禍々しい、毒々しいの間違いでしょ?
 暴虐ないじめ、身体障害者、近親相姦、子供殺し、四肢切断、とエログロ満載で描くテーマは"大人のエゴ"であり、その行く末に待ち受ける人類終末も視野に入れている。広げた風呂敷を中途半端にならない程度まで畳み、読者に想像する愉しみを残している。よく考えられた構成だと思う。
 一方で小学4年生が大人子供であり(子供を描く難しさの露呈)、薬効が子供の誕生日にだけ左右される、という部分の説明不足がちょっと気になった。

【サイト登録日】2010年5月12日 【ジャンル】子供 植物 薬 殺人終末

▽メモ1第8回日本ホラー小説大賞長編賞受賞。

▽メモ2「植物占い」(p21ほか、随所に登場)

 誕生日ごとに植物が割り当てられている占い。もともとは江戸時代の斬首人島本吉右衛門と妻お苑が、植物の薬効を持つ子供は誕生日から区別できることを発見して書き残した。現在の子孫である等々力貴政が実姉の江上理沙子(御園三千緒)とともに薬効の部分をそっくり削除したものが「植物占い」であり、ただ1冊の本として八重垣潤の手に渡った。

▽メモ3薬の描写(p177)

 赤黒くどろどろした粘液で、ぶとうのような塊が蛙の卵のように透明なゼリーにくるまれている。

▽メモ4主人公の薬効(p352)

 万能薬にして不老長寿をもたらす。

▽メモ5著者は子供嫌い?(p333ほか)

 クライマックスの1シーン。レポーターの江上は、八重垣潤を無慈悲にいじめる主人公の少年たちに強く言い放ちます。「残酷な子供たち。わたし、あなたたちのことが大嫌いなの(p333)」
 これは著者の声そのもののように聞こえます。なぜなら、本作で描かれる鬼畜行為は子供に対してのみ奮われているからです。

▽メモ6自信? 自虐?(p145)

 自信とも、自虐的とも受け取れる一文があります。主人公の少年が図書館で借りたミステリ小説に対して、
「ついでに返し忘れていた新本格の話題作(ここだけの話だけど、いわゆる児童虐待トラウマネタでものすごく退屈でつまらなかった)