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『天使の囀り』単行本表紙(初版)

『天使の囀り』単行本表紙(初版)

『天使の囀り』単行本帯-表面(初版)

『天使の囀り』単行本帯-表面(初版)

天使の囀り

Chirping of Angels,1998

作:貴志祐介

Written by Yusuke Kishi

長編

角川書店/本体1,700円+税

単行本初版:1998年6月30日/総445ページ(45w×21L)

新書本初版:−

文庫本初版:2000年12月10日

聴いた者を自殺へ誘う"天使のさえずり"とは?
『黒い家』のホラー大賞受賞者が描く未知の恐怖

 ホスピス勤務の精神科医、北島早苗は、アマゾンから帰国した恋人の高梨が豹変したことに驚く。食欲と性欲の異常増進に始まり、死を極度に忌む死恐怖症(タナトフォビア)が消え失せ、ぼんやり宙を見上げながら「天使の囀りが聞こえる」。
 やがて、大量の睡眠薬とアルコール摂取で高梨が自殺。検死解剖で脳に寄生していた線虫が発見されるものの、厚労省は「危険なし」と判定を下す。
 内密に入手したサンプルで研究を進める大学教授の依田はブラジル脳線虫(Cerebrinema Brasiliensis)と名付け、驚くべき事実を発見する。霊長類の脳に寄生するとA10神経系(恍惚神経)を刺激して恐怖感情を快楽に変えてしまう。
 アマゾン調査団メンバーたちが相次いで奇っ怪な自殺を遂げ、ついには市井の老若男女たちまでもが奇妙な方法で自殺を遂げていることが報じられる。
 ブラジル脳線虫の感染と拡散を阻止すべく調査に乗り出した早苗と依田は、「地球の子どもたち」なる自己開発セミナーに行き着くのだが…。

 タイトルから幻想的な内容をイメージしたが、実際はグロテスク描写が多め。虫嫌いなので、蜘蛛まみれのシーンは生理的にキツかった。
 野生猿を食べた時点でウィルスか寄生虫の話だろう、と薄々わかってしまうのだけど、登場人物たちの立ち振る舞い、物語の展開、天使の囀りの正体などを用意してグイグイ読ませる。ページを手繰るのがもどかしいほどだった。
 邪推だけれど、著者は『ISOLA』のリベンジをもくろんだのではないか。拙く感じた部分(魅力の乏しい女性主人公、空疎な恋愛劇、説明文に終始する原因の究明など)が本作では見事に解消されている。あくまでも邪推だけど。

【サイト登録日】2010年10月29日 【ジャンル】ジャングル アマゾン 自殺 寄生 虫 グロテスク

▽メモ1『ISOLA』と共通する項目

・ドラッグによるインスタント意識拡大への侮蔑(p22、p180)
・リチャード・ドーキンズ著『利己的な遺伝子』への言及(p59)
・アンドリュー・ロイド・ウェバー版『オペラ座の怪人』の登場(p176)
・阪神淡路大震災(p315、p425)

▽メモ2さえずりの描写(p74)

 聞こえるのは日没の頃が多く、空間の裏側で囀っているような感じがする。たくさんの雀が鳴き立てるような、線香花火が弾けるような、楽器の音色を逆回転させたような音。
 ※さえずりの正体については、伏せさせていただきます。

▽メモ3誤記と思われるところ-1(p414)

 誤:「高梨は、たしかに抗精神剤を〜」
 正:「依田は、たしかに抗精神剤を〜」

▽メモ4誤記と思われるところ-2(p440)

 試験管の描写で「〜プラスティックの試験管は〜」とあり、続けて5行後ろで「ガラス管を〜」。

▽メモ5おもな犠牲者たち(死亡順)

(1)高梨光宏…調査団に同行。一世風靡した文芸作家で早苗の婚約者。死恐怖症の気味が濃厚だった。睡眠薬とアルコールの大量摂取で自殺。

(2)赤松靖…調査団メンバーの薬科大学助教授。動物嫌い。サファリパークでトラに噛まれて自殺。

(3)白井真紀…調査団メンバーの女性カメラマン。乳幼児突然死症候群で長男を亡くしている。中央線水道橋駅の線路に長女を投げ入れ、自らも電車に飛び込んで自殺。

(4)畔上友樹…セミナー参加者でハンドルネーム「ファントム」。青年。顔に負った傷を気にしている。家業のメッキ工場で重クロム酸ナトリウムに顔を漬けて自殺。顔がドロドロに溶けてしまった。

(5)吉原逸子…セミナー参加者でハンドルネーム「憂鬱な薔薇」。中年主婦。先端恐怖症。右目に果物ナイフを突き立てて自殺。

(6)滝沢優子…セミナー参加者でハンドルネーム「トライスター」。将来有望な美人の囲碁棋士見習い。極度の潔癖症。腐臭漂うアオコが繁殖する手賀沼の水を大量に飲料して中毒死。

(7)蜷川武史…調査団のリーダー格でセミナー主催者。ブラジル脳線虫(蜷川はウアカリ線虫と呼んでいる)が寄生した猿の肉を参加者に食べさせる。寄生の第四段階を迎え、ロッジの風呂場で異形と化して死亡。

(8)森豊…調査団メンバーで霊長類研究者。蜷川に付き従ってセミナーを運営。寄生の第四段階を迎え、ロッジの風呂場で異形と化して死亡。

(9)荻野信一…セミナー参加者でハンドルネーム「サオリスト」。美少女ゲームが生き甲斐の青年フリーター。蜘蛛恐怖症。寄生の第四段階を迎え、ロッジの風呂場で異形と化すもかろうじて生存。早苗と依田に石油で焼かれる。

(10)依田健二…大学教授で線虫研究の第一人者。ロッジの風呂場で寄生される。恋仲となった早苗に寄生の快楽を味合わせようと迫るが、最後は自宅マンション11Fから転落して自殺。