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『赤いべべ着せよ…』文庫表紙(角川ホラー文庫初版バージョン)

『赤いべべ着せよ…』文庫表紙(角川ホラー文庫初版バージョン)

赤いべべ着せよ…

Let The Baby Red Clothes,1992

作:今邑 彩

Written by Aya Imamura

長編

角川書店(角川ホラー文庫)/本体619円+税

単行本初版:−

新書本初版:1992年1月xx日(双葉ノベルズ)

文庫本初版:1995年8月10日/総291ページ(40w×17L)

鬼女伝説の村で発生した小学生連続殺人事件
狂気と哀切に満ちた事件の顛末を描く怪奇ミステリ

 夫と死別した千鶴は、7つになる娘の紗耶を連れて夜坂の駅に降り立った。千鶴自身が6歳か、7歳の頃に2年ほど住んだことのある土地で、今回は叔父の家へ居候するためにやってきたのだった。
 祖父一家への気遣いもあって心苦しい生活だったが、5人の幼なじみ(高村滋、深沢佳代、松田尚人、山内厚子、土屋裕司)は千鶴たちをあたたかく迎え入れた。しかし、昨年のこと、滋の3歳になる愛娘が絞殺されて廃寺に遺棄されたのだ。
 鬼と化した姫君を封じ込めた菩薩像が安置されている、と言い伝えが残る廃寺には千鶴自身、苦い思い出があった。22年前のこと、”妾”と村人から蔑まれていた女性の3歳になる娘が絞殺されて古井戸に投げ捨てられる未解決事件が起こったのだ。事件後、村を離れた母親とその長男が昨年戻ってきているという。滋の娘が殺されたのは復讐だというのだろうか。
 千鶴の帰省を期に裕司の飼い猫、佳代の娘、厚子の娘が次々と絞殺体で発見される。連続殺人犯の正体は? その動機とは?

 怪奇風味を濃くしたミステリ小説だけど、そこらの凡庸なホラーよりも怖い。なぜならば人間がきちんと描けているためだ。
 とくに負の心理の描き方が上手。自らが不幸に陥ったとき、その辛さを他人への憎悪に転化させることで心のバランスをとろうとする。憎い憎いという怨みは健全な精神をジワジワと侵していき、底なし沼のように暗く、深くなっていき、いよいよ他人の不幸を欲するようになる。このあたりの心の機微がよく描けていて怖い。怖いというよりも、その場から一刻も早く立ち去りたい居心地の悪さのようなものを感じさせる。ホラー嫌いにもオススメできる作品。

【サイト登録日】2012年11月11日 【ジャンル】伝説 伝奇 鬼 村 寺 廃寺 菩薩

▽メモ1大幅な加筆について

 本書は改題とともに大幅な加筆が行われています。そのあたりの事情を著者があとがきで述べているので要約します。
「本書は、3年ほど前に「通りゃんせ殺人事件(双葉ノベルズ)」という無粋なタイトルで一度発売されている。今回の文庫化にあたり、登場人物やストーリーはほどんど変えていないが、物語で重要な役割を果たす童謡を「通りゃんせ」から「ことろ(子とり鬼)」に入れ替えた。
 その理由は「ことろ」のほうがより作品にふさわしいと感じたこと。「ことろ」という語感が手塚治虫の『どろろ』や宮崎駿の『ととろ』を連想させ、なんとなく気に入った」ということです。

▽メモ2主人公の娘はサイキックかも

 主人公の娘、紗耶が超能力者であることを匂わせる記述がある。紗耶がずっと嫌悪していた若い保母が後日、同棲男をナイフで斬りつける事件を起こす。これを鑑みて母親の千鶴は「たんなる物理的な匂いだけではないらしい。匂いに象徴された、何か精神的なものをも感じ取ることができるらしい(p111)」と述べている。