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メドゥサ、鏡をごらん
Medousa,Kagami wo Goran,1997
作:井上夢人
Written by Yumehito Inoue
長編
講談社(講談社文庫)/本体762円+税
単行本初版:1997年2月xx日(双葉社)
新書本初版:2000年8月xx日(講談社ノベルズ)
文庫本初版:2002年8月15日/総492ページ(40w×17L)
自殺した男が遺したメモに<メドゥサを見た>
少女の怨念が引き起こす自殺連鎖の恐怖
作家の藤井陽造が奇怪な自殺を遂げた。木枠に流し込んだコンクリートに身を沈めていたのだ。その手に握られていた小瓶のメモには<メドゥサを見た>。
一人娘の菜名子と婚約しているフリーライターの私は、遺品整理に訪れた陽造宅で200枚の未完成原稿と取材メモを見つける。そこには陽造がしばしば長野県の石海という土地を訪れていたことが記されていた。
陽造はなぜ自らを石像にするような自殺を選んだのか。そのヒントは最後に取り組んでいた小説と関わりがあるのではないか。
石海に赴いた私は、<あずさ>と言い残して首を吊った高瀬充の存在を知る。そのいきさつを老母や町の人々に訊ねても動揺と拒絶が返ってくるばかりだ。
<あずさ>は<メドゥサ>の聞き違いではないのか。さらに調査を進める私の身にも奇妙なことが起こり始める。行動と記憶がかみ合わなくなっていくのだ。
実はミステリのつもりで読み始め、ページをたぐるうちにホラーなの? とあやふやな気分にさせられ、終盤にいたると完全なホラーだとわかる。
本作では、社会という共同体から否定されることでアイデンティティを失う恐怖が描かれている。帰宅したら家族から「あなた誰? 警察呼びますよ」と扉を閉められ、玄関の表札から自分の名前が消えている感じ。周囲との共感を得られず、自分ではない誰かとして認識される。そこにあるのは絶望的な孤独でしょう。それを実現させるために少女の怨霊は時空すら歪める。怨霊の登場シーンはごくわずかだけど、やらかすことが陰険そのもので怖い怖い。
【サイト登録日】2013年5月29日 【ジャンル】呪い 怨霊 亡霊 自殺