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『降臨』文庫表紙

『降臨(『痛いひと』改題』)』文庫表紙

脳の傷に酒がしみる

Nou no kizu ni sake ga shimiru,2002

作:明野照葉

Written by Teruha Akeno

短編36ページ/『降臨』所収/光文社文庫

Kourin,2005

口論の末に客や従業員を皆殺しにした泥酔男
目覚めると殺した相手からの電話が鳴り…

 徹夜明けで帰宅した江崎悟史は、小さなイベント企画会社の経営者。
 疲労困憊した身体をベッドに投げ出し、江崎は憤る。有名私大出の2人の若い社員は「無理です、できません」と泣き言ばかり。叱ればヘソを曲げて口も利かなくなる。なぜ、こんなヤツラのご機嫌を取り、食わせていかねばならないのだ。
 夜7時に目覚めた江崎は、今宵も行きつけのスナック「グラッパ」へと足を運ぶ。マスター夫妻とは、15年のつきあいになる。
 ストレスで酒量が増え、クダを巻いた江崎に女性客が文句をつけた。夫妻も女性客の味方のようだ。カっとなった江崎は、酒瓶で全員の頭を殴りつける。
 翌朝、家で目覚めた江崎は、我に返って青くなる。人を殺してしまった。どうする。とにかく逃げなければ。慌てて必要なものをバッグに詰め込むところは、忘れ物を告げるマスターからの電話が入る。
 胸をなで下ろす江崎。オレは殺してなかった。あれは幻覚だったのか。

 仕事に疲れ、追いつめられ、酒によって人格が壊れるという話。大きな事件が起こるわけでも、意外性があるわけでもない。これが作者の持ち味なのかもしれないけど、どうも印象に残りにくい。
「脳に傷があるから」とうそぶく主人公だけど、なにを意味しているのか、よくわからない。なにも「脳に傷」を超常現象として説明せよ、というわけじゃない。主人公が「オレは脳に傷があるからな」と思い至る過程くらいは描いてほしい。そうしないと読み手は、主人公の心の動きを追うことができず、壊れていく人間の怖さを感じとることができない。

【サイト登録日】2008年10月5日 【ジャンル】サイコ・幻覚

▽メモ1掲載

月刊『小説宝石』2002年3月号