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『降臨』文庫表紙

『降臨(『痛いひと』改題』)』文庫表紙

見つめてごらん

Mitsumetegoran,2003

作:明野照葉

Written by Teruha Akeno

短編33ページ/『降臨』所収/光文社文庫

Kourin,2005

周囲が少しずつ変わっていく恐怖
疑心暗鬼に陥った男に待ち受ける皮肉な運命

 パジャマの柄が違う。袖を通した瀬永融一は違和感を覚えた。
 妻の涼子は、昨日着たのと同じパジャマだという。韓国の企業と事業提携に伴う多忙さから疲労を溜めている融一は、不承不承ながら布団に入る。
 翌日、帰宅するとドアの表札が微妙に違うことに気付く。部屋に入る。カーテンの柄が違う。腕時計が違う。妻の顔まで微妙に違う。コイツはいったい誰だ?
 ヒステリックに叫んだ融一に娘の寛子が怯えて泣き出す。「お父さんの顔が変わってる。すっごい怖い顔してる」
 騙されないぞ、これは宇宙人の陰謀に違いない。どいつもこいつもグルになってオレを欺こうとしている。なんと用意周到な宇宙人だろう。
 診察を受けることに同意した融一に、医者は優しく語りかける。「あなたの脳は過労と睡眠不足で、一時的に機能不全になっているだけです」。
 医者の言葉も疑う融一。真実はどこにあるのだろうか。

 タイトルの「見つめてごらん」とは、1点を見つめたり、1つのことにこだわりすぎると意味そのものが不明瞭になっていくことを示している。この点に執着して描くべきだった。怖さの焦点が絞れたと思う。
 本作が怖くないもう1つの理由は、主人公の状況にある。偏執的な疑心暗鬼男が家庭だけで騒ぐのは変。会社でもトラブルを起こしてしかるべき。そのあたりがまったく描かれていない。主人公が追いつめられていない、と感じる。なりすまし系は、読み手の不安感に訴えるジャンル。逃げ場がない状況まで主人公を追いつめてこそ、不安や恐怖が生まれる。ちょっと残念な作品。

【サイト登録日】2008年10月8日 【ジャンル】サイコ・宇宙人

▽メモ1掲載

月刊『小説宝石』2003年8月号