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『ぼっけえ、きょうてえ』文庫表紙

『ぼっけえ、きょうてえ』文庫表紙

密告函

Mikkokubako,1999

作:岩井志麻子

Written by Shimako Iwai

短編51ページ/『ぼっけえ、きょうてえ』所収/角川ホラー文庫

Bokkee Kyoutee,1999

寒村に暗い影を落とす虎列刺の猛威
不義の快楽の果てに尽きてゆく官吏の命運

 明治34年。岡山の山奥に在する和気××村。役場に勤める弘三は、波風を立てずに精勤し、妻トキ、幼い娘カズ子、ミサ子との平穏な家庭に満足を得ていた。
 もっかの問題は、収まる気配のない虎将軍こと「虎列刺(コレラ)」の流行。避病院では血を抜かれてしまう、という流言が信じられており、感染した身内をかくまってしまう家が多い。結果として一家全員が罹患し、死に至る。
 心臓麻痺で余命がない柴田助役の提言によって、役場の裏手に「密告函」が設けられる。虎列刺と疑わしき隣人の密告を呼びかける匿名投書函だが、開封と事後確認を任じられた弘三は気が重い。村人から恨まれるのは自分なのだ。
 ある日のこと、数通の投書に「お咲」の名が記されていた。祈祷師を営む両親と共に村はずれに住むお咲は、その美貌と色香によって男を虜にしているという噂。柴田助役も彼女の愛人に名を連ねていたという。
 お咲を訪ねた弘三は、肉体関係を持ち、不実の秘密を愉しむようになるが…。

 心情から風景、出来事に至るまで、ていねいな描写を積み上げるのが作者の作風。それが艶めかしい恐怖を演出しているんだけど、一歩間違うと各個がバラバラに動き始め、入り乱れる危うさも持っている。
 本作は、残念ながらまとまりに欠けている。物語の核は「内通と怨嗟、制裁と恐怖、善悪の表裏」であり、虎列刺や不倫、魔性の女を使ってつなぎ合わせている。こうした個々の事象があちこちで主張を始めるから、物語が散漫となり、集中できない。一人語りの手法で物語をつなぎとめることに成功した『ぼっけえ、きょうてえ』よりも凝った構成にした分、粗が出ちゃった感じ。

【サイト登録日】2008年12月6日 【ジャンル】呪い・土俗・民俗