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依って件のごとし
Yotte Kudan no Gotoshi,1999
作:岩井志麻子
Written by Shimako Iwai
短編51ページ/『ぼっけえ、きょうてえ』所収/角川ホラー文庫
Bokkee Kyoutee,1999
貧困の村に暮らす兄妹にまとわりつく黒い影
化け物”件(くだん)”がもたらすものとは…
岡山北部の寒村。わずか二坪ばかりの掘っ立て小屋に暮らす14歳の兄利吉、7歳の妹シズ。暖を取る唯一の場所は粗末な竈だったが、そばには黒い影がじっと佇んでいる。なにかはわからぬが、シズは恐れ、怯えていた。
女や牛が入ってはならぬ忌んだ土地「ツキノワ」の畑で母親が自殺し、その風当たりは兄妹を強く打つ。とくにシズは村人から忌み嫌われている。
大柄な利吉は、牛でも音を上げる畑作業に従事して生活を支えていた。そんなとき、日清戦争が勃発。志願兵として利吉は戦地へ赴く。「わしは絶対死なんのじゃ。何もかも教えて貰うた。ツキノワの『件』にな」
由次一家に引き取られたシズは、過酷な労働や虐待を強いられ、牛に寄り添って寝る家畜同然に暮らしていた。
そんなある夜、大柄な黒い影が鎌で一家を惨殺するが、シズには手をあげずに去っていく。その事件からしばし経ち、戦死と思われていた利吉が帰郷する。
本書の主人公たちは、みな底辺で暮らしている。厳しい自然、貧困、土地の因習といった環境もそうだけど、なによりも人の品性を徹底的に卑しめる場所に置かれている。近親相姦さえ許される、極端な環境といっていい。
本作の兄妹は差別を受け、家畜同様に暮らしている。「おしん」がおままごとに見えてしまう。この過酷さは、物語と読み手をある一定の距離を持たせるように仕掛けた作者のたくらみに感じる。「この子かわいそう」よりも「こうなりたくない」という忌避の感情を先立たせる。読み手の同情心で物語が曇らないようにしているのかもしれない。作者がSなだけかもしれないけど。
【サイト登録日】2008年12月10日 【ジャンル】呪い・土俗・民俗・妖怪
▽メモ1ツキノワ(p158)
持ち主に災いをもたらす土地のこと。参考サイト:なべのさかやき
▽メモ2くだん(p162〜p163)
牛頭人身、または人頭牛身の化け物。悪い出来事を予知して死ぬ。必ず的中するという。「良うないときに生まれてきて、良うないことを告げてから死ぬ化け物じゃ(p163)」。参考サイト:怪異・妖怪伝承データベース







