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呪扇
Jyusen,2004
作:森山 東
Written by Higashi Moriyama
短編47ページ/『お見世出し』所収/角川ホラー文庫
Omisedashi,2004
所有者に凶事をもたらす「呪いの扇」
伝統の暗闇を垣間見せる妖艶な呪物ホラー
扇屋「杉一」の養子となった要三は、義父の一吉から手ほどきを受け、立派な扇職人に成長した。養子に来てから20年が経ち、肺がんの末期で床に伏していた一吉は、いまわの際で語り始める。名人とうたわれた父、一三のことを…。
時おしりも日露戦争激化のころ、軍部の手で東京へ連れてこられた一三。若き士官は命じる。ロシア皇帝に不幸をもたらす方法を知っていると聞いた。
一三は答える。「呪扇作ってロシアの大将に送ったらええと思います。」
吉凶には量がある。吉事をもたらす扇子を作ったら、凶事を引き取る扇子を作って釣り合いを取る。それが100年に1度作られる呪扇。
かくして一三は、9人の生娘を材料として残虐極まりない手法で、ロシア皇帝を呪殺する「大呪扇」を完成させる。
時は流れ、齢78となった一三は、扇子組合会長として東京の扇子展示会へ足を運ぶ。そこで展示されていたのは、忌まわしき「大呪扇」だった。
『非人間の条件』でも書いたけど、小道具ホラーって数あれど、拍手に価する作品って少ない。小道具に依りすぎてもダメ、無視しすぎてもダメ。物語の軸がぶれないようにするだけでも一苦労のはず。本作はバランスが絶妙で、ページ数が少ないせいもあってか、最後まで緊張感が途切れない。扇の製造工程をきちんと描くことでドッシリとした土台を築き、そこに呪扇の存在理由が言葉巧みにかぶることによって生み出された緊張感だと思う。
それはさておき本作の白眉は、呪扇を作るときの鬼畜さ。生娘を扇骨代わりにする、という猟奇アイデアが毒々しくも艶めかしい。
【サイト登録日】2009年7月4日 【ジャンル】京都・呪い・道具
▽メモ1作者の父親は扇職人
翻訳家・大森望さんのサイト「Nozomi Ohmori SF Page」の2005年11月5日の日記に載っています。ホラー大賞受賞パーティの席で「お見世出し」のモデルになった舞妓さんの写真も見せてもらったそうです。