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夜市
Yoichi,2005
作:恒川光太郎
Written by Kotaro Tsunekawa
短編87ページ/『夜市』所収/角川ホラー文庫
Yoichi,2005
夜市の晩に起こった不思議と奇跡の物語
第12回日本ホラー小説大賞大賞受賞作品
学校蝙蝠が告げる。今宵は夜市が開かれる、と。
夜市。さまざまな世界とつながり、あらゆる物が法外な値段で露店に並んでいる。人間、妖怪を問わず、さまざまな生き物が集まる夜市には、3つのルールがある。客を騙してはいけない、客はなにかを買わねば夜市から出られない。そして、一生で2度しか来られないこと。
子供の頃、夜市に迷いこんでしまった祐司は、野球が上手くなるという道具と引き換えに弟を人さらいに渡してしまう。元の世界へ戻ると、弟は最初から存在しないことになっていた。
月日は流れ、弟の名前や顔の記憶が薄れていく中、祐司はある決意をする。待ちわびた夜市の開催を知った祐司は、高校の同級生で友達以上恋人未満のいずみを連れて再び訪れる。手には全財産の72万円、胸にはある企みを秘めて。
知り合った老紳士と共に3人は、人さらいの露天商へと足を運ぶのだが…。
ホラー小説大賞の大賞受賞が納得できる数少ない作品。平明で、柔らかい言葉を連ねているだけなのに人物と世界がググっと心に迫ってくる。
本作の見事なところは、優しさと残酷さが同じ分量で溶け合っているところ。登場人物の前には現実という壁があり、うまく立ち回ろうが、強い想いを持とうが、決して超えることができない。ご都合主義のロマンチズムにきっぱりと一線を引いている姿勢を賞賛しよう。
さらさらと筆の赴くままに書いているのか、推敲に推敲を重ねているのか。著者の執筆風景がすごく気になる。
【サイト登録日】2009年9月5日 【ジャンル】妖怪 異世界
▽メモ1第12回日本ホラー小説大賞大賞受賞
短編の大賞受賞は、第6回『ぼっけぇ、きょうてぇ(1999)』、第10回『姉飼(2003)』に続いて3作品目。