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鉄柱 クロガネノミハシラ
Kurogane no Mihashira,2003
作:朱川湊人
Written by Minato Syukawa
中編171ページ/『白い部屋で月の歌を』所収/角川ホラー文庫
Shiroi Heya De Tsuki No Uta Wo,2003
小さな町に屹立する謎の鉄柱
理解しがたい生のあり方に直面した男の苦悩
部下との不倫が原因で東京本社から地方の営業所へ転属となった武藤雅彦。
妻の晶子を深く愛しているのに、己のふがいなさを悔いるばかりだった。
居を構えたのは、営業所にほど近い小さな町<久々里町>。住人たちは温かい心の持ち主で、いささか度を超えていると思うほど親切だった。そして、山の上の開けた場所に立つ不思議な鉄柱。ミハシラ。どんなことに使うのだろう。
環境が性に合っていたのか、病弱で人見知りの激しい晶子さえ見違えるほど生き生きとしている。この転属は良かったかもしれない、と思い始める雅彦。
そんなおだやかな日常を揺るがす事件が起きる。ジョギング中の雅彦は、鉄柱で首を吊っている老女を発見する。駆けつけた町内会長の大野や、駐在所の警官は慌てる様子もなく、穏便に処理を済ませる。
鉄柱は、幸せの中で人生の幕引きをしたいという「満足死」を願う自殺者が使う物だった。自殺を容認する住民たちの意識に違和感を覚える雅彦だったが…。
自殺を容認する、という異常なシチュエーションの存在を"本物らしく"みせるため、舞台の小さな町、登場人物の境遇、容姿や性格などを平易かつ丁寧に描いてみせる。その積み重ねが臨場感となり、読み手に思索をうながす。物語を追いつつも頭の片隅で「自分なら…」と自問自答を始める。これこそ小説の醍醐味。それを味あわせてくれた本作はお見事だといえる。
本作を端的に表している一文がある。
「明日の嵐で花が散るなら、今日、その花の下で死のう(p290)」。
でも、明後日はもっと美しい花が咲くかもしれないよ、と思う。







