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酔歩する男
Suiiho Suru Otoko,1996
作:小林泰三
Written by Yasumi Kobayashi
中編170ページ/『玩具修理者』所収/角川ホラー文庫
Gangu Shurisha,1996
愛する者を甦らせるタイムトラベルの陥穽
時間の流れに翻弄される男たちの無間地獄
菟原手児奈(うないてこな)が電車に轢かれて死んだ。事故か、自殺か。
手児奈を奪い合っていた大学生の小竹田(しのだ)と血沼(ちぬ)は茫然自失とし漂白の日々を送る。
ある日のこと。我に返った血沼が提案する。手児奈を生き返らせよう。
医学部に進んだ小竹田はクローン技術の可能性を追求し、血沼は別の技術に望みをつなぐ。お互いの研究が成功することを祈って別れる2人。
30年経った。家庭を持ち、医大教授となっていた小竹田の元をボロ同然の血沼が訪れる。方法が見つかったという。
時間とは意識の流れにほかならない。それならば時間を認識する脳の特定部位を機能不全にすれば、時間を自由に行き来できるはずだ。
医大の粒子線癌治療装置を使い、血沼、小竹田はそれぞれの脳に施術する。
過去と未来が混濁する世界が広がっているとも知らずに…。
20代前半まで結構な数のSFを読んだ。お気に入りはクラークとアシモフ。つまづいたのはハードSF(テクノロジーの解説に終始)で、ギブスンの『ニューロマンサー』の文章に止めを刺された。"SFイコール苦痛"のイメージに憑かれてしまい、今後も死ぬまで読むことはないと思う。クラークは別。
そんなわけでホラーよりもSF色が強い本作は、読み進めるのがキツかった。お話はおもしろいし、「時間の流れ、意識の支配」の発想もよい。しかしながら不条理環境におけるアイデンティティ喪失という着地点、手児奈という女性の魅力が希薄なことの2点が気になる。久々に安部公房を読みたくなった。
【サイト登録日】2010年5月27日 【ジャンル】SFホラー 時間 タイムトラベル 脳
▽メモ1有名な脳ホラーは?
一番手はアーサー・マッケン作『パンの大神(1894)』でしょう。脳をいじることで見えない世界が見えてしまう、という古典ホラーです。
▽メモ2伝説の女性「手児奈」
千葉県の伝説に登場する女性の名前。美しく手児奈を慕う男たちが争いを始める。それを悲しんだ手児奈は入水自殺を遂げる。
参考サイト◆手児奈の民話(市川市)◆手児奈堂へようこそ
▽メモ3シュレディンガーの猫(p109〜p110)
【注】これから書くことは信頼性ゼロです。正しい知識は文献なり、ネット検索を当たってくださいね。
「シュレディンガーの猫」とは、2つの状態が共存している可能性を指す量子力学のお話らしいです。
50%の確率で毒ガスが発生する箱の中にニャンコを入れる。人間が観察するまで箱の中には、生きてるニャンコ、死んでるニャンコが重なり合った状態で存在しているかもしれない。この生死が共存している状態を人間が観察することは不可能(観察したとたんに生死いずれかが決定する)なので、実証することはムリなのよん、みたいなことです。たぶん。
参考サイト◆シュレーディンガーの猫 - Wikipedia







