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『古川』文庫表紙(初版)

『古川』文庫表紙(初版)

冥い沼

Kurai Numa,2001

作:吉永達彦

Written by Tatsuhiko Yoshinaga

短編84ページ/『古川』所収/角川ホラー文庫

Furukawa,2001

少女の幽霊が出没するという噂が立つ沼
昭和30年代の大阪を舞台にした『古川』姉妹篇

 古川沿いに建つ川西小学校に通う1年生の窪川太一は、製材所を経営する父の永治と2人暮らしだった。母のことは覚えておらず、父に問いただしても土佐弁で怒鳴り始めるしまつだ。
 自宅近くにある沼ではエビガニが捕れるため、多くの子供たちが遊び場にしていたが、殺された女の子の幽霊が出る、という噂もあった。
 太一はふと思う。ひょっとしたら父は母を殺して沼に沈めたのではないか。沼の底には母がいるのではないか。
 製材所で働く若者が人差し指を切断する事故が起き、機械のそばに落ちていた指を拾った太一は釣り針と糸でしっかりと結びつける。
 エビガニは共食いする。魔界の墜ちた母親も人間の肉を共食いするはずだ。
 沼に指を放り込んだ太一だったが、思いもよらぬ強い力で引きずり込まれる。沼の底には何が潜んでいるというのだ。

 作中に漂う市井の生活感がたいへんよい。情景描写、人物たちのしぐさ、大阪弁を用いた会話文があっさり目の文体で胸に迫ってくる。著者の持ち味が自分の趣向とドンピシャだったのだろう。
 ホラーとしては相当数の疑問符が付く。『古川』と同様に強引すぎる怪異の登場に違和感を覚える。色分けがはっきりしすぎちゃってる、という感じ。ホラーの醍醐味とは日常に忍び込む、または同居する恐怖だと思う。とくに本作のような幽霊譚ならばなおのこと、観客の注意を惹かないようにゆっくりと照明を落としていく感覚を描き出すべきではないか。

【サイト登録日】2010年5月15日 【ジャンル】昭和 亡霊 怨霊 水死 川 子供 モンスター UMA

▽メモ1時代設定は『古川』と同じ?

「園まり(p143)」の名が頻繁に出てくるので、『古川』と同じ昭和32〜33年頃を舞台にしているようです。