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『サンマイ崩れ』文庫表紙(初版)

『サンマイ崩れ』文庫表紙(初版)

サンマイ崩れ

Sanmai Kuzure,2006

作:吉岡 暁

Written by Satoshi Yoshioka

短編61ページ/『サンマイ崩れ』所収/角川ホラー文庫

Sanmai Kuzure,2006

サンマイ修復に出かけた僕を待ち受ける真実
第13回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品

 メンタルを病んでいる23歳の僕は、熊野三山を望む精神病院で3度目の入院加療中だった。もちろん自主入院であり、早く治して復学したいものだ。
 テレビによると上陸した並の勢力の台風がシモナザ(下字)という集落に未曾有の被害にもたらしたという。病院を脱走した僕はボランティアに参加すべくシモナザへ向かう。
 しかし、シモナザの救助活動は本格化しており、僕が出番はなさそうだ。対策本部へ向かった僕は、カミナザという集落に住むワタナベ老人と出会う。地滑りでサンマイ(お墓)が崩れたので助けてほしいという。地元青年団で粗暴な目つきのアキやん、茶髪の若者まっちゃんと共にカミナザへ同行することにした僕。
 悪路を歩きながらワタナベ老人は熊野信仰のうんちくを語り始める。そして僕にいう。「やはり御縁と言いますか、御導きでございましょうね」
 カミナザに着いた僕たちはさっそく作業に取りかかったのだが…。

 主人公の変な人格や奇行が絶妙に描かれており、息つく間もなく読み切ってしまった。散乱した遺骨を集めに行くだけのお話だが、そこここに精神病や、熊野信仰に関するうんちくが散りばめられていて奥行きを感じさせる。情景描写も上手で、山崩れの光景(p13)などがすんなりと頭に浮かんだ。
 開始早々からクスクス笑いながら読んだけれど、ゾクリとするシーンも用意されている。ホラー小説として成り立っている点も高く評価したい。
 ラストにサプライズも用意されているけれど、驚くたぐいのものでない。むしろ納得しちゃう。伏線がうまい具合に張られていたことの証左だろう。

【サイト登録日】2010年5月28日 【ジャンル】信仰 お墓 幽霊 精神

▽メモ1第13回(2006)日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品

▽メモ2サンマイ(p28)

 梵語の音訳で、漢字では「三昧」と書く。心が安寧で、1つのことに集中している状態を指すそうです。また、お墓や経堂を意味する三昧場(さんまいば)の語源になっており、実際にお墓を「三昧」と略して呼ぶことがあるそうです。参考:「広辞苑 第六版 (C)2008 株式会社岩波書店」

▽メモ3神仏分離(p37)

 維新直後の明治政府の宗教政策の一つ。慶応4年(1868)3月の神仏判然令など神道国教化をめざして行われた一連の政策により、神仏習合を否定し、神道を仏教から独立させた。「広辞苑 第六版 (C)2008 株式会社岩波書店」

▽メモ4神仏習合

 日本固有の神の信仰と仏教信仰とを折衷して融合調和すること。奈良時代に始まり、神宮寺・本地垂迹(ほんじすいじゃく)説などはその現れ。神仏混淆。「広辞苑 第六版 (C)2008 株式会社岩波書店」

▽メモ5『恋愛小説家』を思い出す

 映画『恋愛小説家』(Yahoo!映画)を思い出しました。ジャック・ニコルソン演じる主人公の強迫観念じみた数々のエキセントリックな行動は見ていて笑えるけれど、ちょっと哀しくなります。