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『トンコ』文庫表紙(初版)

『トンコ』文庫表紙(初版)

トンコ

Tonko,2008

作:雀野日名子

Written by Hinako Suzumeno

短編58ページ/『トンコ』所収/角川ホラー文庫

Tonko,2008

姉兄を求めてさまよう子豚トンコの冒険行
第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品

 運搬車に揺られて食肉工場へと向かう生後6ヶ月の雌豚「063F11」。養豚場では、子豚はトンコと呼ばれ、親身に養育されていた。
「063F11」のトンコは覚えていた。姉豚、兄豚たちが同じ車に乗せられ戻って来ない。なぜ戻ってこないのか、どこへ行ったのか、トンコにはわからない。
 トンコを乗せた運搬車が高速道路で横転。放り出されたトンコの耳に姉豚、兄豚たちの呼ぶ声が聞こえた。森の中へと入っていくトンコだが、声がする方へ行っても姿は見えない。それでも姉や兄が鳴く。ぶひ。ぷぎぃぃ。ぼととん、ぼひ。
 トンコも鳴く。姉兄たちにだけ通じる鳴き声で「ぎょっぎょっ」
 養豚場から出たことのないトンコにとって、森は初めて経験するもので満ちあふれていた。大好きなリンゴの味と似ている木の実、初めて見るコスモスの畑、用水路を通り、寄せては返す波に洗われる海辺。
 姉兄の声と匂いに誘われるまま、街へ向かったトンコだったが…。

 ホラーの絶対条件は「恐怖」を描くことだけど、線引きはあいまい。超自然の恐怖こそホラーという意見もあるが、ならば幽霊が重要な役回りで出てくるシェイクスピアの『ハムレット』もホラーか? へりくつですね。棚上げ。
 本作は食用豚の冒険譚を優しい筆致で描いている。食用豚に対する読み手の共通認識は、待ち受ける死という絶望感だ。一方で主人公のトンコ自身は死そのものを理解してない純真無垢な魂を持っている。つまり、本作の要点は「読み手が持つ素の恐怖を呼び覚ます」ということ。ホラー小説だと胸を張ってよいと思う。食用豚を主人公にしたのはちょこざいだけど。

【サイト登録日】2010年6月4日 【ジャンル】動物 豚 事故

▽メモ1第15回(2008)日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品

▽メモ2本作はホラーであるのか?(p248)

 著者が受賞の言葉として「(ホラー愛読者には)私が書いたものはホラーにあらず、と唾棄されるかも(p248)」と述べています。

▽メモ3トンコと姉兄

 063F11…主人公。12姉弟の11番目。好奇心旺盛。

 063M02…兄豚。乱暴ながら臆病で脱糞する。

 063F06…姉豚。包容力を持つ優しい豚。

 063M07…兄豚。気に入らないと放屁する。リンゴ以外に興味がない。

 063F08…姉豚。臆病でF6の姉豚を頼るワガママ豚。

 063M10…兄豚。トンコのすぐ上の兄。おまわりが得意な利口豚。

 063M12…弟豚。トンコの弟。身体が小さい。

▽メモ4涙腺が…(p42〜p43)

 水たまりで泳ぐシーンに涙腺がゆるみました。「豚は笑うよと場長は目を細めた」