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『生き屏風』文庫表紙(初版)

『生き屏風』文庫表紙(初版)

生き屏風

Ikibyoubu,2008

作:田辺青蛙

Written by Seia Tanabe

短編81ページ/『生き屏風』所収/角川ホラー文庫

Ikibyoubu,2008

鬼の子と屏風の幽霊に芽生えた友愛の情
第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品

 村はずれに棲み、県境を守る妖の皐月。「布団」と名付けた馬を寝屋とし、外から良くないものがやってくるのを未然に防いでいる。そんな皐月の元を造酒屋の小間使いが訪れた。
 毎年夏になると亡き奥方様が屏風の中に現れ、あれやこれやとわがままをいう。力尽くで祓うと悪鬼に化けるやもしれないので、ぜひ話相手になって奥方様を慰めてほしい。
 渋々と酒屋へやってきた皐月を出迎えたのは、真っ赤な屏風の中でガラスの煙管をくゆらせる奥方の幽霊だった。
 やれ暑いだ、やれ退屈だ、と小言を並べる幽霊と差し向かいに座った皐月は、請われるままにいろいろな話を語り聞かせる。布団との出会い、雨の妖のこと、人を喰う化け物の話、鬼でありながら人間に育てられた父の鬼五郎のこと。
 酒を酌み交わしながら語り、笑い、皐月と屏風の幽霊は打ち解けていく。

 つっけんどんでサバサバとした屏風の女幽霊が味わい深く、真面目でおもしろみの少ない妖の皐月を引き立てている。他の収録作品(『猫雪』『狐妖の宴』)を読むとわかるけれど、皐月は無味乾燥な風に描かれており、物語に出しゃばってこない。蕎麦における小麦粉みたいなもので、物語のつなぎという役割を果たしている。こういう人物は描きづらいのではないかと思うけど、自由自在に操っている著者には大きな才能があるのだろう。
 一方でコロコロと視点が変わる語り口には落ち着きのなさを感じる。良くも悪くも紙芝居を見ているようで即興的なものを感じた。

【サイト登録日】2010年6月27日 【ジャンル】妖怪 幽霊

▽メモ1第15回(2008)日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品

▽メモ2皐月について

 収録三篇に散らばって描写されているため、『狐妖の宴』でまとめて紹介します。