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猫雪
Nekoyuki,2008
作:田辺青蛙
Written by Seia Tanabe
短編42ページ/『生き屏風』所収/角川ホラー文庫
Ikibyoubu,2008
雪になりたい、と願う心に秘められた想い
妖の皐月も再登場する『生き屏風』連作短編
親の遺産を食いつぶしながら暮らす次郎は、昼寝のさなか、庭の池にたたずむ猫を見かける。鯉にちょっかいと出すと思いきや、いっこうに手を出さない。
「オレもおまえのような猫になってみたいよ」「そうか。猫になりたいか」
猫がしゃべった。きっと夢だろう。ならば雪になってみたい。風に任せて舞う落ちるとは、どのような気持ちだろうか。
次の瞬間、次郎は雪になっていた。自宅の庭にヒラヒラと舞い落ちる。
目を覚ますと見慣れた居間にいる次郎。猫の姿もない。やはり夢だったか。
その四日後。県境の妖、皐月の元を訪れた猫。かつては県境を守っていた妖であり、変化の術のお師匠様でもある。
「変化の才がある人間に出会ったところ、雪になりたいと言いよった。雪という発想がいい。誰かさんとは大違いだ」
得意げに話す猫先生に皐月は問いかける。いったい何の用なんですか?
不器用に生きてきた男が雪となって風に運ばれ、村を巡り、ほのかな恋心を抱き続けている女性の元へ舞い落ちる。なんともロマンチックなお話。
茶目っ気たっぷりの妖の猫もよい。皐月の問いかけには答えずに「にぁゃん」と鳴いて霧のごとく消える。煙に巻くってこういうことかもね。
一方で皐月の性格が無頓着かつ天然であることを示すためか、菊の花精姉妹と出会うエピソードを練り込んでいるけれど、物語とは直接関係がない。言葉は悪いけど、この「投げっぱなし」こそ著者の持ち味なのかもしれない。
【サイト登録日】2010年6月27日 【ジャンル】妖怪 幽霊