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『生き屏風』文庫表紙(初版)

『生き屏風』文庫表紙(初版)

狐妖の宴

koyou no Utage,2008

作:田辺青蛙

Written by Seia Tanabe

短編39ページ/『生き屏風』所収/角川ホラー文庫

Ikibyoubu,2008

桜舞い散る樹の下で猫先生と狐妖が振り返る人生
妖の皐月も再登場する『生き屏風』連作短編

 県境の妖、皐月の元を村の若い娘が訪ねてきて、「惚れ薬の作り方を教えてほしい」と切実に訴える。
「知らない」と答えた皐月にあきれるやら、怒り出すやらの村娘。色恋沙汰にはうとい皐月は、しかたなく村はずれの洞窟の棲む狐妖の銀華を訪ねる。
 妖艶な女性に化けた狐妖いわく、ヤモリの黒焼きが効くらしいよ。
 皐月と村娘は苦労して壺一杯のヤモリを捕らえ、火であぶって黒焼きにする。黒焼きを後生大事に持ち帰った村娘だが、その顛末やいかに。
 自らが植え替えた桜の樹を見上げる猫先生。本来の姿である人間となって、舞い落ちる花びらに興じている。そこへお手製の甘いお酒を片手に狐妖が参上。狐火を灯してあでやかに舞いながら、2人で昔語りにうつつをぬかし、酒杯も進んでほろ酔い気分。
 そこへ皐月も加わった。春の暖かい日差しの元で妖たちの宴もたけなわ。

 猫先生と狐妖に過去を語らせ、主要人物としての地位固めをしている作品。シリーズ化を見越しての前振りといった風であり、色恋沙汰のエピソードはあるけれど、取って付けた感じがする。本来は物語の中で過去が明らかにしていくべきであり、片手間に仕上げたのかな、という印象を持った。
 今後シリーズとして続けるならば、強大な妖怪に立ち向かう的な少年マンガの展開は辞めてほしいと願う。著者にしか描けない世界があることは収録3篇を読めばよくわかる。このセンスを大切にしてほしい。腕力に頼らずとも優しさや真面目さで守れるものがあることをつむいでほしい。

【サイト登録日】2010年6月29日 【ジャンル】妖怪 幽霊

▽メモ1皐月について(1)両親

 父親…灰色の肌をした大きな鬼(『生き屏風/p46など』)。
 捨て子(鬼?)だったところを大工の棟梁、五郎二と妻さやかに拾われて育てられる。人間と長く暮らしていたために人を喰う習性はなく、木彫り職人として頭角を現す。腕を磨くためには世間に出ていかねばダメ、と五郎二に諭されて今生の別れを告げる。皐月は祖父祖母に会ったことがない(『生き屏風/p50など』)
 母親…花塊という美貌の水妖。人間を交わることを快く思っていない。皐月は母の容姿を受け継がなかった様子。梅の実は妖の腹を冷やす、といったにも関わらず、梅の実を食した皐月の尻を赤くなるまで叩いてる(『生き屏風/p18』)

▽メモ2皐月について(2)容姿

 前髪の下に小指の先ほどの角を持っている(『生き屏風/p15)』)。
 生き屏風の幽霊には「あんたみたいにへちゃむくれじゃないくて(『生き屏風/p43』)」、菊花精からも「狐妖みたいに奇麗じゃないのにね(『雪猫/p106』)」と言われている。

▽メモ3皐月について(3)名前

  目の色が碧色の光を帯びていることから新緑の名を付けられた(『雪猫/p123)』)。