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萩の寺
Hagi no Tera,1999
作:瀬川ことび
Written by Kotobi Segawa
短編33ページ/『お葬式』所収/角川ホラー文庫
Osoushiki,1999
山奥の一軒家に棲む老尼僧の秘密
古典風に味付けした山の怪談
浮気した恋人の開き直った態度に逆上した祐二は、発作的に絞殺する。
死体隠蔽のために不案内な山の奥深くまでやって来たものの、不注意から車が崖下に転落。奇跡的に助かった祐二の頭に浮かぶのは、一刻も早く逃げ去ること。
さっそく山を下り始めると、林の中を横切る女と思わしき影。長い髪を振り乱した麻美が四つん這いで追いかけてきた。ケガを負った身体に鞭を打って逃げ出し、ついに迷子になった祐二の前に白熱灯を灯した民家が現れる。
祖母から聞かされた山の不思議な伝説マヨヒガを思い浮かべたが、留守番中という老尼僧に迎えられ、阿弥陀仏像が安置された本堂へ通される。
詰問を恐れて口数少ない祐二に対し、老尼僧は自らの人生を語り始める。
京の大邸宅で暮らしていたこと、夫と死別したこと、なによりも大切な侍女夏萩との思い出…。それらの話に時代錯誤的なものを感じる祐二だったが、庭に面した簾の奥から恐るべきものの侵入を目の当たりにしてしまう。
笑いを極力抑えており、文体も締まっている。怖い話も書けるんだよ、という引き出しの披露なのかもしれない。
『お葬式』『ホテルエクセレントの怪談』『十二月のゾンビ』で笑いに満たされたので、次も笑ってしまおうと構えて読んだのが裏目に出たのかもしれないけれど、あまりおもしろくなかった。
民家へたどり着く経緯が強引にすぎる。著者が主人公の背中を突き飛ばして無理矢理民家へ押し込んでいる印象を受ける。主人公の恐慌やふてぶてしさを丁寧に描き、行き着くべき運命であったことを読み手に納得させるべき。