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『厄落とし』文庫表紙(初版)

『厄落とし』文庫表紙(初版)

初心者のための能楽鑑賞

Syoshinsya no tame no Nougaku kansyou,2000

作:瀬川ことび

Written by Kotobi Segawa

短編37ページ/『厄落とし』所収/角川ホラー文庫

Yakuotoshi,2000

「猩々」と「空吹」に好かれた男が迎える人生の転機
能鑑賞の手引きとしても役立つ異色ホラー

 入社4ヶ月の新人営業マン庸介は、仕事、人間関係、クーラーのないアパートの熱帯夜と、うんざりする日々を送っていた。
 ほのかに恋心を寄せていた営業事務の由希子をお茶に誘い出したところ、思いかげないオファーを受ける。能楽定例公演の無料招待券があるんですけど…。
 日曜日。由希子との初デートとして能楽堂に足を踏み入れた庸介は、おごそかな雰囲気とクーラーの効いた心地よさから眠りに落ちてしまうが、由希子も「それでいいんですよ」と意に介さない。
 2度目の能楽デートでも開演後すぐに眠る庸介だったが、右側の空席に人の気配を感じる。目をつぶっているのにその姿が見えてくる。赤黒い肌をしたひょっとこのような顔。慌てて目を覚ますと、やはり空席のままなのだった。
 そのことを聞いた由希子は「うそふき…」。空吹と書き、人間に化けた蚊の妖精を摸した狂言の面であるという。いったい何が起こっているのだろう?

 能について知っていることは、古典芸能、重要無形文化財、面をまとって舞う。以上。日本人としてはなはだ恥ずかしく思うけれど、能がなにを演じる舞台なのか、能楽の「楽」とはなにか、狂言とは違うのか。まったく知らない。
 そんな痴れ者にとって本作はたいへん興味深く、能鑑賞の基礎知識を教えてもらった気分になった。
 物語の中で不思議な出来事が起こるけれど、展開や雰囲気は終始のんびりムード。婿捜しのテストでした、というラストも良い意味で力が抜けている。ホラーを読んでいる気分ではなかったけれど、それもまたよし、と思った。

【サイト登録日】2010年11月9日 【ジャンル】伝統芸能 能楽 狂言 面 婿養子

▽メモ1国立能楽堂公式サイト

▽メモ2風呂敷き(p80)

「風呂敷き」の"き"ってなんでしょ? 能楽ではそういう呼び方をするのでしょうか。

▽メモ3猩々(p88)

「猩々」という演目に登場する伝説上の生き物。お酒好きで赤い面をしてる。
 この「猩々」は、猩猩緋という色名や、目が赤いショウジョウバエ(猩猩蠅)の名の由来にもなっているそうです。