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『夏合宿』文庫表紙(初版)

『夏合宿』文庫表紙(初版)

廃屋

Haioku,2001

作:瀬川ことび

Written by Kotobi Segawa

短編35ページ/『夏合宿』所収/角川ホラー文庫

Natugassyuku,2001

立派な旅館の廃墟に出没する幽霊たちの宴
著者のベスト短編に推したいノスタルジア怪談

 住宅と田畑が混在する地方都市の住宅地にある旅館<昇雲閣>の廃墟。
 土曜日の学校帰り。高校生の充は、友人の和彦とそのガールフレンドの加奈子に誘われるまま、廃墟探検に出発する。
 旅館は荒れ果てていたが、そこかしこから以前の風格が感じられる。よくぞ残っていてくれた、と充はため息をつく。
 恐怖はその後でやってきた。3階の大広間で野太い指の幽霊が出現し、和彦と加奈子は我先にと逃げ出してしまう。一方の充は床を踏み抜いて足首をケガし、身動きができなくなってしまう。
 恐れおののく充だったが、腕の幽霊に害意はないようだった。
 ほどなくして舞台の上に女性の両腕が、続いて白足袋の両脚が現れてシンクロのごとく艶めかしい舞いを披露する。やんやの歓声を手振りで送る男の片腕。
 恐怖を忘れ、色香に当てられつつも魅入ってしまう充なのだった。

 恐怖のあまり発狂して笑いが止まらなくなる。一昔前のホラーではお約束のシチュエーションを本作では逆手にとっている。本当に愉快だから笑いが止まらなくなったちゃったんだよ、と描いてみせる。この発想には恐れ入った。
 廃墟の描写も上手で、荒れ果てて、埃っぽく雰囲気をよく表現している。
 やがて廃墟が取り壊されて駐車場、パチンコ屋、コンビニとなる。成長した主人公はそのさまに一抹の寂しさを覚える。話のまとめ方も上手だ。著者の過去の作品(『お葬式』『厄落とし』)を含めても最良の作品だと思う。

【サイト登録日】2010年11月28日 【ジャンル】廃屋 旅館 幽霊 芸者