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『夏合宿』文庫表紙(初版)

『夏合宿』文庫表紙(初版)

たまみ

Tamami,2001

作:瀬川ことび

Written by Kotobi Segawa

短編40ページ/『夏合宿』所収/角川ホラー文庫

Natugassyuku,2001

その泣き声は大地を割り、化石に命を吹き込む
驚異の赤ちゃんに愛された男の意外な人生

 定職を持たない石渡利之は、父親に命じられるまま宗家(本家)へ出向く。
 両親の話はこうだ。50年ぶりに宗家の跡取りが生まれた。その子が生涯食べ物に困らないように、という願いを込めた祝典「お食い初め式」に出席せよ。
 宗家の存在すら初耳の利之だったが、なにはともあれ石渡町に到着する。
 地元の名士であり、立派な屋敷に居を構える現宗主の叔父と叔母、親族一同に歓待される利之。過分に扱われているような気がするけど、なぜだろう…。
 その疑問は翌日のお食い初め式で明らかになる。跡取りの多満美に婿入りせよ、という仰せなのだ。その多満美からして恐るべき赤ん坊なのだ。生後100日にして哺乳瓶を噛み千切るほどの鋭い歯を生やしているのだった。
 その夜、屋敷から脱走した利之だったが、猛スピードのはいはいで追いかけてくる多満美。追いつけないと知るや多満美が赤子の声で泣き始める。すると大気は震え、地面は裂け、崖が崩れ、現出した恐竜の全身骨格まで動き出したのだ。

「おれはまっさきに、楳図かずおの『赤ん坊少女』を思い浮かべてしまった(p138)」と主人公に言わせているとおり、あのタマミちゃんのコメディーバージョンというべき赤ん坊が登場する。夜這いで爆笑し、はいはいしながらトラクターを追ってくるシーンでも爆笑した。
 いまでも年に数回『赤ん坊少女』を読み返すけれど、「タマミは悪い子でした」のセリフに泣けてしまう。モンスターとして生まれた哀しみを端的に表した名セリフだと思う。これに比肩する名セリフといえば「オレが、今では、伝説の怪物なのだ(『地球最後の男』/リチャード・マシスン」)しかない。

【サイト登録日】2010年11月28日 【ジャンル】赤子 赤ちゃん 超能力 恐竜 化石 幽閉 田舎