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『今昔奇怪録』文庫本表紙(初版)

『今昔奇怪録』文庫本表紙(初版)

疱瘡婆

Housoubabaa,2009

作:朱雀門 出

Written by Idzuru Suzakumon

短編36ページ/『今昔奇怪録』所収/角川ホラー文庫

Konjyakukikairoku,2009

子供の死骸を食らうは奥州の妖怪なのか?
月夜の下で撃ち抜かれた墓荒らしの意外な正体

 赤子の泣き声のようなものを耳にして、大店の摂津屋の幼い姉妹は興味を惹かれる。疱瘡(天然痘)が猛威をふるい、家から出ることを禁じられていた姉妹だったが、その声は裏手の空き家から聞こえてくる。姉妹はこっそりと家を抜け出して空き家を覗き込むと、母猫と生まれたばかりの子猫たちを目にする。しかし、覗かれていることを知った母猫は我が子を盗られるのでは、と狂乱の果てに子猫たちをかみ殺してしまうのだった。
 その姉妹が疱瘡にかかり、あっけなく死ぬ。嘆き悲しむ両親に悲劇が追い打ちをかける。墓地が荒らされ、娘たちの亡骸がむさぼり食われていたのだ。
 疱瘡婆のしわざではないか、という噂が流れる。人肉を食らいたいがために疱瘡を流行らせる妖怪だという。
 摂津屋の大番頭は信じていなかった。犯人がいるに違いない、と狩人を雇って墓を見張らせる。ついに現れた墓荒らしめがけて鉄砲が火を噴くのだったが…。

 姉妹が子猫を覗き見る場面から幕を開ける。あたかも主人公のように振る舞わせているけれど、結末の理由付けを描いたにすぎないため、あっけなく疱瘡で病死させる。赤子の三女が病死したこともポツリと付け加えられるが、悲惨さの後押しがあからさますぎて心に響かない。
 端的にいえばご都合主義の、雑な作品。邪推だけど、著者は結末から物語を組み立てたのではないか。ゆえにすべてのしわ寄せが巻頭に押し寄せ、不自然さばかりが目立ってしまう。丁寧さに欠けている印象が強くてがっかり。

【サイト登録日】2012年4月11日 【ジャンル】怪談 妖怪 宮城 東北 実在 本

▽メモ1時代背景は江戸時代後期?

「病を広めているのは疱瘡婆という妖怪で、奥州波奈志という本にも出ていた(p81)」というような描写がある。「奥州波奈志」は実在の書物で、1817年頃宮城の女流文学者、只野真葛 - Wikipediaが著した伝聞集。「疱瘡婆」の話も掲載されている。
 奥州波奈志の一部は『奇談異聞辞典』(ちくま文芸文庫)にも収められているらしい(未確認)。