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『今昔奇怪録』文庫本表紙(初版)

『今昔奇怪録』文庫本表紙(初版)

釋迦狂い

Shakagurui,2009

作:朱雀門 出

Written by Idzuru Suzakumon

短編26ページ/『今昔奇怪録』所収/角川ホラー文庫

Konjyakukikairoku,2009

血に塗れた江戸の闇へとつながるドア
現実と仮想現実の陥穽にはまった男の恐怖

 強豪力士の釋迦ヶ嶽が、藤兵衛なる熱狂的ファンに刺殺される。藤兵衛は町でも殺戮を重ね、ついには獄門の刑に処された。「釋迦狂い」は、入れ込みすぎることを戒める故事として現在でも使われている。
 再現映像とナレーションが終わり、照明が点いた。ドアの向こうには時代劇のセットさながらの江戸の町が広がっている。
 町に踏み入れた私に血まみれの藤兵衛と釋迦ヶ嶽が襲いかかってくる。良く出来たアンドロイドだ、と思ったのもつかの間、太股と首筋を噛みつかれ、私は激痛で目の前が暗くなる…。
 私はVRグラスを外した。すべてはバーチャルリアリティのアトラクションだったのだ。施設のドアから外に出たはずなのだが、目の前に広がるのは江戸の町。
 すでに記憶もあいまいな私は、友人の携帯電話を鳴らす。眠そうな友人の声が告げる。夜中の2時になんの用だ、と。私はいったいどこにいるのだろうか?

 異世界に迷い込んだり、現実世界から切り離される恐怖は、ホラーの定番中の定番。ホラーの先祖であるゴシック小説も「異世界(城や館など)に入り込んだ者が体験する恐怖」が骨子となっている。とにもかくにも「既存の社会との接点を失う恐怖」という共通点がある。
 本作には、こうした喪失感や恐怖感が微塵もない。「釋迦狂い」なる故事成句はよく考えられているけど、バーチャルリアリティにアンドロイド、と訳の分からぬSF趣向が乱入し、怖さに震えるシーンも失笑するしかない。あれま。

【サイト登録日】2012年4月11日 【ジャンル】怪談 仮想現実 バーチャルリアリティ 相撲 力士 殺戮 殺人鬼