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『穴らしきものに入る』文庫本表紙(初版)

『穴らしきものに入る』文庫本表紙(初版)

赤子が一本

Akago ga ippon,2011

作:国広正人

Written by Masato Kunihiro

短編53ページ/『穴らしきものに入る』所収/角川ホラー文庫

Amarashikimononihairu,2011

景品は赤子という謎の自動販売機
半信半疑の女はコインを投入するのだが…

 これを見てみろよ。夫に呼び止められて振り返る。子供がいない私たち夫婦は、夏の暑い土曜日、近所のスーパーで買い物をした帰り道だった。
 手招きする夫の前にあるのは、やや色の褪せた缶ジュースの自販機。そこには「7が揃えば赤ちゃん1本プレゼント」とシールが貼ってあった。シール自体も古ぼけており、よほど前に貼られたものらしい。イタズラにしては少々悪趣味ではないだろうか。
 すると自転車でやってきた老女が500円玉を挿入し、4本のオレンジジュースを買い求める。残念ながら4回ともハズレだが、かつて女の赤ちゃんを当てたことがあると言う。缶から産まれたという赤ちゃんは、元気に育ったとも話す。
 そんな馬鹿な話があってたまるものか。命を軽々しく扱うさまにも腹を立てた私だったが、それ以来、自販機が心の中で大きな位置を占めるようになる。
 憑かれたように自販機にお金をつぎ込む私。なにが待ち受けているのだろう。

 収録5篇でもっともホラーらしいテイストを持つ作品。缶を飲み干してからラストに至るまでの薄気味の悪さはなかなかのものだ。
 一方で著者の悪いところが一番目立つ作品。それは登場人物に人間味が欠けているところで、本作では奥さんの中身がスカスカのペラペラ。自動販売機に固執するのも、命を軽々しく(p199)と怒るシーンの論旨も、さっぱり意味がわからない。いくら奇抜な思いつきでも登場人物がハリボテではおもしろいはずがない。本作のアイデアを阿刀田高あたりが描いていたら、もっと不気味で、上質で、艶っぽい作品になっていたろうに。

【サイト登録日】2012年4月19日 【ジャンル】赤子 誕生