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1997年第4回

おもな出来事 1997

■3月東電OL殺人事件

■4月消費税増税。3%→5%へ

■7月イギリス領香港が中国に返還

■8月元イギリス皇太子妃ダイアナが自動車事故死

■9月『Mac OS 8』日本発売

■12月京都議定書採択

■12月ポケモンショック(光過敏性発作の誘発)

■12月東京湾アクアライン開通

荒俣宏氏 選評(要約)

新境地を開拓する作品が急激に増えた。文章にした話だけで全部終わり、という構成では、ホラーという大きな容れものを使い切れないのではないか。

黒い家
(前回の佳作『ISOLA』から)書き方が飛躍的に向上した。ただ、"完成"した芸をパターン化に向けてはいけない。こういうオーソドックスな異常者の話は、下手をするとインパクトにおいて現実の三面記事に負ける危険がある。つねに取材と体験を重ね次作に資してほしい。

レフトハンド
 ウィルスを「古代の海」奪回をめざすミクロな異物としたアイデアは、『パラサイト・イヴ』に匹敵するひらめきといっていい。しかし、大きな欠点もある。「左手生物」の秘密が明らかになるプロセスが、事件の展開と同期してないことだ。だから、解明部分が長々とした説明文ないし自己解説になってしまう。それと、左手が独立的に変化して「高等生物」になるという部分も、無理がある。

D-ブリッジ・テープ
 冷たい文章でテンポを出した作品。この作品の結末は、テープを吹き込んでいる主人公が、いつ死ぬか、という興味だけで引っぱっている印象だが、これにもっと闇の背景を暗示させたかった。

景山民夫氏 選評(要約)

今年は豊作であったと言ってよいと思う。

黒い家
 今回のホラー小説大賞は本作で決まりだ、と心に決めて選考会のために家を出た。後半のどんでん返しのための丹念な前振りを、作品のかなりはじめの方から書いていく姿勢にも好感が持てたし、ストーリーテリングの上手な書き手だという印象が、ページを繰る毎に強まっていった。一年間でこんなに上手くなる人がいるものなのか、と驚かされた。

レフトハンド
 敢えて不満を述べるとすると、もう少し全体を刈り込んだ方が良いし、LHの生物学的存在性にいまひとつの説得力が感じられなかった点が惜しい。

D-ブリッジ・テープ
 アイディアの勝利である。ホラーというよりは、ウィアード・テイルの分野に属する作品だとは思うけれど、本賞の可能性を広げる意味で、こういった作品も歓迎である。

高橋克彦氏 選評(要約)

若い才能の今後に大いに期待したい。

黒い家
 信じられない傑作と遭遇した。技術的に褒めなければならない部分はいくらもあるが、それよりもすべてを圧倒して蹴散らす犯人像の恐ろしさ。選考してるいるのも忘れ、ひたすら怯えた。あの『ミザリー』よりも数段怖い。これは日本製ホラーの輝かしき到達点の一つではないか?

レフトハンド
 アイデアが素晴らしかった。

D-ブリッジ・テープ
 冒頭を読み始めて愕然となった。この著者は小説の書き方さえ知らないのではないか? 無意味な改行の連続で腹さえ立ってくる。読んでいるうち、ざわざわと震えがきた。冒頭の悪文も計算の上のような気がしてきた。これはとんでもない傑作である。十年に一人の才能と言っても、たぶん大袈裟にはならない。

林真理子氏 選評(要約)

今回受賞作が三点出て、この賞も非常に活気を得た、とても嬉しいことだ。

黒い家
 前回は惜しいところで佳作であったが、今回は堂々の大賞である。これからもずっといろいろなものを書き続けられる人、というのが選考委員の一致した意見だ。

レフトハンド
 強く推した。物語としての緊張感、すなわち恐怖へ向かっての進み方が実に巧みだ。これだけの大作が書ける人だ、次回に期待する。

D-ブリッジ・テープ
 実に不気味な後味の悪い作品である。救いも何もなく読んでいて気が滅入ってくるほどだ。が、読者をこういう気分にさせることも、ホラー小説が持っている大きな魅力のひとつだろうとあえて推した。終わり方についてはもっと考える余地があるだろう。

第4回日本ホラー小説大賞受賞作

大賞

「黒い家」初刊表紙

保険金詐欺を狙うサイコパスの恐怖

黒い家

受賞者:貴志祐介

長編賞

「レフトハンド」初刊表紙

漏洩した致死率100%の殺人ウィルス

レフトハンド

受賞者:中井拓志

短編賞

「D-ブリッジ・テープ」初刊表紙

孤独な少年少女の壮絶なサバイバル記

D-ブリッジ・テープ

受賞者:沙藤一樹

 第4回目にして三賞そろい踏みです。
 前年佳作入賞していた貴志祐介さんが堂々の大賞受賞。保険金詐欺をたくらむ不気味な夫婦と保険調査員の攻防を描いた本作は、日本と韓国で映画化され、大ヒットを飛ばしました。
「レフトハンド」は、第2回大賞の「パラサイト・イヴ」と同系列のSFバイオホラー。「D-ブリッジ・テープ」は、嫌悪感あふれる描写で審査員の賛否を呼んだ不思議な小説です。