全作品リスト

書名:短編集

書名:長編

書名:掌編集/実話怪談

書名:ホラー関連書

作家リスト

シリーズリスト

特集ページ

サイトトップへ戻る

本サイトについて

更新履歴

累計:

今日:

昨日:

2010年第17回

おもな出来事 2010

■2月バンクーバー冬季オリンピック開幕(カナダ)

■4月第1回核安全サミット開催

■5月上海国際博覧会開催

■6月第19回FIFAワールドカップ・南アフリカ大会

■6月小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還

■9月尖閣諸島中国漁船衝突事件

■10月国勢調査開始

■11月北朝鮮軍が韓国・延坪島を砲撃

荒俣宏氏 選評(要約)

 全作品が高い水準に達していた。例年どおり血なまぐさく陰惨なものが多く、ホラーを安易に残虐に置き換える傾向がつづく。

お初の繭
 長編部門第二位に推した。たくさんいる女工の性格分け、恐怖の盛り上げ方などを、たくみな語り口で書きこなしていた。その反面、語りの力に頼るあまり、新鮮なサプライズには欠ける。

バイロケーション
 長編として第一位に推した。テーマだけでも哲学的な怖さがあるので、会話によって怖さや不条理を説明するのではなく、具体的な場面描写を積み重ねて両者の違いをイメージ化させる必要がある。

少女禁区
 短編では、群を抜いていた。ただ、物語を少女的なラブロマンスに委ねて「愛の指輪」でまとめた結末が、私のような老人には甘口すぎるように感じられた。

貴志祐介氏 選評(要約)

 今回より、選考委員の末席に加わることになった。ファイナリストのうち五十代が最多だったのは、ホラーにも人生経験が大きな武器となる証である。

お初の繭
『女工哀史』の設定を大胆に生かした日本的ゴシック・ホラーとしての完成度で、頭一つ抜けていた。結末が予測可能かなという気もした。

バイロケーション
 文章と筋運びに安定感があり、リーダビリティはきわめて高かった。ストレートな恐怖の総量では大賞作品に及ばなかったが、この作品も作者も、大化けするスケールの大きさを感じさせた。

少女禁区
 数少ない二十代の作品で、練達の五十代の筆にはないフレッシュさが評価された。ゲーム的な世界観は読者を選ぶかもしれない。次作が楽しみである。

高橋克彦氏 選評(要約)

 これでいいのか、という価値観のぐらつきも正直感じた。(17回目の選考)はじめて覚えた揺らぎかもしれない。

お初の繭
 内容の九割が以上が普通の日常で一割ほどが怖いという怪奇小説のなんと多いことか。「怖さの意外性」がすなわち上質という認識に作者も読者も囚われ過ぎている。
 この作品は古典をなぞったものではない。怪談の王道を堂々と突き進んだものである。「怖さの意外性」がホラーを限りなく薄味にしてしまったと教えてくれる。

林真理子氏 選評(要約)

 今回も幼女の性的虐待を扱った応募作がいくつかあった。ホラー小説における不健全さは、もっと別の方に発揮してもらいたいものである。

お初の繭
 結末はある程度予想が出来るとしても、蚕のあのむっとするにおいと生あたたかい空気を漂わせる作品をつくったのは見事だ。タイトルの「あゝ人不着袖」は「あゝ野麦峠」のパロディであろう。あまりセンスがいいものとは思えない。

バイロケーション
 登場人物が巧みに描けていて、面白い一篇となった。きっと大きく伸びる人であろう。

少女禁区
 やや古めかしい印象を受けた。生贄とか呪術といった、手垢のついた小道具を使うなら、もう少し新鮮な驚きが欲しいと思ったのだ。

第17回日本ホラー小説大賞受賞作

大賞

「お初の繭」初刊表紙

製糸工場で待ち受ける少女たちの悲運

お初の繭(「あゝ人不着袖」改題)

受賞者:一路晃司(「ふりーくかな」改名)

長編賞

「バイロケーション」初刊表紙

実体を持つもう一人の自分に翻弄される恐怖

バイロケーション(「同時両所存在に見るゾンビ的哲学考」改題)

受賞者:法条 遙

短編賞

「少女禁区」初刊表紙

呪術師の少女が苦痛の中に潜めた想い

少女禁区(「遠呪」改題)

受賞者:伴名 練(「半名 練」改名)

 受賞3作は時代背景や物語はまったく異なりますが、古典的な題材を柱にしている印象を受けました。
 大賞作に描かれている製糸女工の苦難そのものが、現代の我々からすれば恐怖そのものです。
 一転、長編作は現代が舞台ですが、ホラーの古典テーマである二重人格やドッペルゲンガーを思わせます。
 短編作は、平安期の陰陽道を思わせる呪術世界を描いています。
 ちなみに受賞3作がそろって改題の上で出版されるのは、日本ホラー小説大賞史上初です。