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ルインズ 廃墟の奥へ(下)
The Ruins,2006
作:スコット・スミス(近藤純夫訳)
Written by Scott Smith
扶桑社(扶桑社ミステリー)/本体733円+税
長編総349ページ/本文組38w×16L
単行本初版:−
文庫本初版:2008年2月29日
食肉植物が張り巡らす巧妙な罠と貪欲な触手
救済なき生き地獄からの生還ははたして!
携帯電話を探すために縦坑へ降りたパブロが墜落して大けがを負う。一刻も早い治療が必要だが、残された5人にも灼熱の太陽、渇き、飢えが襲いかかる。
リーダー格として指揮を執るジェフは確信する。
携帯電話の呼び出し音は食肉植物が発する擬音なのだ。それは人間の言葉さえ発し、食べ物の匂いを漂わせて5人を混乱させる。
ヤツラは記憶力を持っている。知性すら持ち合わせているかもしれない。我々を見張り、混乱させ、仲違いさせ、衰弱してから喰うつもりだ。
ジェフはマヤ人の真意も理解する。マヤ人は丘の周囲の土壌に塩を練り込んで植物の拡大を防いでいる。丘に登った者の体に食肉植物の種子か、胞子が付着するとすれば、マヤ人たちが植物の拡散を防ぐためにすることは1つしかない。
食肉植物の巧妙な罠に落ち、一人、また一人と命を落としていく若者たち。
果たして極限下から脱出する方法は残されているのだろうか。
本書の惜しいところは極限のサバイバルをテーマにしているにもかかわらず緊迫感が乏しいところ。軽薄な登場人物たちの描き方が原因でしょう。一方で本作の力点は食肉植物の恐怖にあるわけで、人間ドラマうんぬんをツッつくほうがお門違いなのかもしれない。
ホラー小説史で語り継がれるほどの作品ではないけれど、モンスター小説として好事家の記憶には残ると思う。こざかしい悪知恵、どん欲に死体を喰らいつくす植物は不気味で、これが地球に広まったら人類の大半は喰われ、生き残った人々も食糧として家畜化。この危機にヒーローが…(笑)。
【サイト登録日】2010年4月26日 【ジャンル】食人 食肉 植物 モンスター 廃墟 密林 ジャングル サバイバル
▽メモ1食肉植物の描写
形(上巻p109)…とぐろを巻いたような濃緑のツル、手のひらのような葉、鮮やかな紅い花。
生態(上巻p298)…無機物以外ならばなんでも食べる。生長が早く、目にもとまらぬ速さで動く。
樹液(上巻p131、p140)…乳白色の樹液は酸に似ており、皮膚に触れると火傷を負う。
擬音…擬音を出すことができる。携帯電話(上巻p135)、鳥の鳴き声(上巻p244)、英語(下巻p111)、ドイツ語(下巻p296)など。
匂い(下巻p197〜p202)…嗅いだことのある匂いをマネして発散できる。焼きたてのパン、ステーキ、アップルパイなど。
どこから来た?(下巻p91〜p92)…不明。縦坑の底に無数の白骨があることから鉱山採掘時に偶然発見されたのではないか。
▽メモ2犠牲者(死亡順)
(1)エイミー…テキーラで酔ったあげく、ツルに口と鼻を塞がれて吐瀉物による窒息死。
(2)パブロ(本名デメトリス・ランブラキス)…縦坑への墜落による脊髄の損傷と両足切断による心身衰弱状態のところを襲われる。
(3)ジェフ…夜陰に乗じて丘から逃げ出そうとするもマヤ人に喉と胸を射貫かれ、植物に喰われる。
(4)マティアス…エリックの自傷行為をやめさせるためにナイフを取り上げようとしたときに誤って心臓をひと突される。
(5)エリック…体内で繁殖した植物によって身体衰弱。ステイシーに懇願してナイフで殺してもらう。
(6)ステイシー…マヤ人が見える位置に座って両手首を切り、失血死直前に植物に喰われる。
▽メモ3意図された登場人物像(p88〜p91)
「生還したら映画化されるだろう」という会話の中で、ヒーロー(ジェフ)、悪役(マティアス)、お調子者(エリック)、善良なヒロイン(エイミー)、あばずれ(ステイシー)とステレオタイプに分類しています。









