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『[新版]怪奇小説傑作集1』文庫表紙

『[新版]怪奇小説傑作集1』文庫表紙

緑茶

Green Tea,1869

作:J・S・レ・ファニュ(平井呈一訳)

Written by Joseph Sheridan Le Fanu

短編64ページ/『怪奇小説傑作集1[新版]』所収/創元推理文庫

The Great Stories of Horror and The Supernatural,1969

赤い目の猿は幻覚か、悪魔の化身か
憔悴の果てに破滅する牧師の恐怖体験

 独自の視点から診療を行い、医学的哲学者と呼ばれるヘッセリウス博士は、パーティで知己を得た牧師のジェニングス師から健康上の相談を持ちかけられる。
 その内容は、身の回りに猿の幻覚が出没する、という奇妙な告白だった。
 緑茶を飲みながら古代宗教研究の一環として邪教を調べ始めた頃、猿の幻覚が出現するようになった、とジェニングス師。
 まっ黒な小猿で、眼はピカピカと赤く光り、ときには体全体がボンヤリと発光することもある。触ることはできないが、時と場所を問わず、他人と一緒のときでも四六時中付いて回ってくる。自分にはハッキリと見えるのだ。
 ふっといなくなったかと思えば数週間を置いて再び現れる。そのたびに行動は過激になり、暴れる、罵詈雑言を吐く、教会での祈祷を邪魔する、自殺を命令する、と気の休まる暇がない。憔悴しきった表情で語るジェニングス師。
 悪鬼のごとき猿の正体は、緑茶の成分が作用した幻覚なのだろうか。

 秘書が診療記録から発見した書簡、というパターン(1)の体裁(パターンについては『炎天』参照)
 この小説が怖いのは黒い猿のおかげだ。幻のような存在のくせに四六時中付きまとい、罵詈雑言を吐き、自殺を命じ、牧師を破滅させる。教会内を跋扈するから悪魔の類ではないみたい。作品の結びでは、語り部でもあるヘッセリウス博士が「緑茶のような興奮剤(p446)」を摂りすぎることで幻覚がひどくなったのだと断じる。神秘は存在しない、というわけ。
 神秘ゆえに否定する頑固な常識人。レ・ファニュは嗤って書いたのかもね。

【サイト登録日】2008年1月18日 【ジャンル】幻想・憑依・精神

▽メモ1オカルト的な医学解釈(p445,p447など)

脳と各器官を結ぶ「流動体(p445)」なる霊的物質、「遺伝性の自殺マニア(p447)」など、随所に登場している。

▽メモ2牧師の教区

ウォリックシャー州ウォリック。ハムレットの出身地。『ポインター氏の日録』参照。

▽メモ3天界奥秘(p399〜p402)

エマニュエル・スエーデンボルグ(Emanuel Swedenborg)の『天界奥秘(Arcana Coelestia)』が登場。エマヌエル・スヴェーデンボリ - Wikipedia