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『[新版]怪奇小説傑作集2』文庫表紙

『[新版]怪奇小説傑作集2』文庫表紙

恋がたき

The Rival Dummy,1928

作:ベン・ヘクト(宇野利泰訳)

Written by Ben Hecht

短編20ページ/『怪奇小説傑作集2[新版]』所収/創元推理文庫

The Great Stories of Horror and The Supernatural vol.2,1969

零落して見る影もない名腹話術師
その理由は人形との諍いにあるというのだが

 ヴォードヴィルの芸人連中が集まるレストランで興行師の友人ジョー・フェリスと食事をする新聞記者の僕。
 ジョーは少し先のテーブルで食事をする、ずんぐりとした小男を指して言う。あれこそ世紀の大腹話術師、名人ガッボ。いまや気が違ってしまい、見る影もなく落ちぶれているが、その理由というのがね…。
 ベルギーから渡ってきたガッボは一流の腹話術師だったが、ちょっとした変わり者。ジミィと名付けた人形に話しかけ、ミルクまで与える。ガッボのバリトンとジミィのキィキィ声に楽屋の芸人たちも気味悪がるほどだった。
 あるとき、巡業先で知り合った女性ルビーナに恋したガッボは、舞台の助手として招き入れる。ところが意地悪なルビーナは、ガッボを無視し、人形のジミィに愛想を振りまく始末。
 激怒したガッボとジミィは激しい口論の末、ついに決定的な出来事が起こる。

 超自然ホラーとも、異常心理とも読める作品。
 ジミィは生きている人形だったのかもしれないし、ガッボはもともと精神を病んでいて妄想の世界に生きていたのかもしれない。
 そもそもガッボは誰に対して嫉妬していたのだろう。恋人の気を惹く生意気な人形か、それとも人形の気を惹く見え透いた態度を取る女性にか。
 その回答はオチに記されている。ラスト2行で読み手の心はせつない無常感に包まれるはず。本当に見事な締めくくりだと思った。人間の心を壊すには喪失さえあればいいんだね。切実な感じ。

【サイト登録日】2008年2月3日 【ジャンル】人形・異常心理

▽メモ1ジミィの描写(p259)

ほっぺたを真っ赤に染め、頭は丸く、ガラスの目玉が飛び出し、口をパクパク開閉させる木製のマリオネット。

▽メモ2ヴォードヴィル

タレントが芸を披露するアメリカのショービジネスの一種。

▽メモ3わに足(p266)

ガニ股のこと(爪先が外側に向く外鰐、内側に向く内鰐)。