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『[新版]怪奇小説傑作集2』文庫表紙

『[新版]怪奇小説傑作集2』文庫表紙

卵形の水晶球

The Crystal Egg,1897

作:H・G・ウェルズ(宇野利泰訳)

Written by Herbert George Wells

短編31ページ/『怪奇小説傑作集2[新版]』所収/創元推理文庫

The Great Stories of Horror and The Supernatural vol.2,1969

異世界を映し出す不思議な水晶球
秘密を解明すべく研究を進めるのだが…

 うす汚い小さな骨董屋のウィンドウにひっそりと置かれている卵形の水晶球。客が値段を聞いても「5ポンドいただきます」と法外な要求をする店主のケイブ氏。それでも買う気がそがれないと知るや、ほかにも希望者がいるので…とひどく焦った様子。どうやら手放したくないようだ。
 その水晶球、ケイブ氏しか知らない秘密があった。光の入る方向から137度の角度で眺めると異国の風景を映し出すのだ。地球とはやや異なる風景で、カブトムシに似た巨大な虫、触手で飛び跳ねる蠅に似た生物などを見ることができる。
 薄情な妻や継子たちとストレス過多の生活に辟易としているケイブ氏は、水晶球の内に広がる異世界を見ることが唯一の愉しみだったのだ。
 医科学校の助教授ウェイスに秘密を打ち明けたケイブ氏は、協力して水晶球の学術研究に熱中する。そんなある日、人間そっくりの顔をした、鳥のような生物が水晶球の中からこちらを覗き込んでいるのを目撃する。

 SF小説の父と呼ばれているウェルズ。本作も純然たるホラーというよりは、SFとユートピア思想のまぜこぜファンタジー小説という気がする。
 水晶球の中に広がる異世界。デカイ虫がイッパイ出てくる描写を読むと、あまり気持ちの良い世界とは思えないんだけど、主人公には現実世界より魅力的な場所と映った。ゆえに死に顔には笑みが浮かぶ。
 異世界に魅入られた人や出来事をテーマにしたホラー小説は無数にあるけど、引き金となるのは恐怖、闇、強大な力って感じ。本作の中心にあるものは憧憬と救済。無理やりホラー呼ばわりしなくてもいい作品だと思う。

【サイト登録日】2008年2月6日 【ジャンル】異世界

▽メモ1水晶球の描写(p328〜p329)

光が少しも固定せず、球体の中で動き回っている。空洞の中に発光性ガスをつめこんだ感じ。

▽メモ2イギリスの通貨

ポンドとペニー(1ポンドは100ペニー)