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『[新版]怪奇小説傑作集3』文庫表紙

『[新版]怪奇小説傑作集3』文庫表紙

アダムとイヴ

Adam and Eve and Pinch Me,1921

作:A・E・コッパード(橋本福夫訳)

Written by Alfred Edger Coppard

短編22ページ/『怪奇小説傑作集3[新版]』所収/創元推理文庫

The Great Stories of Horror and The Supernatural vol.3,1969

誰にも知覚されない透明化した自分
末の息子だけは気配を感じているようだが…

 コドリングという家の姓にはなんらかの意味があるのか。そんなことを考えながら風光明媚な田舎に建つ自宅の周りを散策していた作家のギルバート。
 家に戻った彼は、自分の部屋から聞こえてくる妻の声にハっとする。薄く開いた扉から覗き見ると男の顔を両手で愛撫する妻の姿があった。動転したギルバートは「ミルドレッド!」と妻を名を叫び、扉を開けようとするが動く気配がない。部屋にやってきた女中に訴えかけるが、無視されてしまう。
 怒り、絶望、疎外感を胸に屋外へ出たギルバートは、庭の手入れをしていた園丁とぶつかりそうになる。と、園丁の体がわけもなく自分をすり抜けていく。
 自分ははたして死んだのか、それとも作家という職業の切磋により架空の自分を現実世界に投影する方法を身につけたとでもいうのだろうか。
 庭で遊んでいた3人の我が子たちも父親が見えぬ様子だが、末っ子のガブリエルだけはなんらかの気配を感じ取っているようで…。

 透明というか幽体離脱というか。恐怖より幻想の風味が強い作品。全体的に淡々としており、牧歌的というか穏やかで静かな世界が広がっている。
 幻想を強めている原因の1つが主人公の心の動き。妻の浮気を疑うイライラが、透明になった境遇への興味にスっと置き換わる。感情の切り替えがハッキリしすぎていて、それらが交わることはない。他人の夢を覗き見ているような気分になり、なんというか身の置き所のない違和感を覚える。こういう雰囲気もわりと好きなので興味深く読んだ。
 ふわふわした感覚が好みならば、読んでみるといいかも。

【サイト登録日】2008年2月20日 【ジャンル】幻想・予知夢・幽体離脱

▽メモ1コドリング(codling)

タイセイヨウマダラの幼魚。