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『ナイト・フライヤー』文庫表紙

『ナイト・フライヤー』文庫表紙

魔物の棲む路

Coming to Grief,1988

作:クライヴ・バーカー(酒井昭伸訳)

Written by Clive Barker

短編43ページ/『ナイト・フライヤー』所収/新潮文庫

Prime Evil,1988

砂利道に潜む怪物を恐れた少女時代
大人になっても消えぬ恐怖の正体とはいったい?

 愛する夫と香港で満ちたりた日々を送るミリアムは、母親の訃報を受け、生まれ故郷リヴァプールへ戻ってくる。
 子供の頃、遊び場としていた古い石切場とその裏を通る砂利道は、転落防止のために高さ3メートルの煉瓦壁で仕切られている。
 ミリアムにとって砂利道は、不気味な怪物が潜んでいる「魔物道」だった。事件が起きたわけでも、不吉な噂もない。にもかかわらず大人になった自分さえも恐れさせるのはなぜだろう?
 ただ、18年前に見た記憶が鮮明に残っている。石切場から煉瓦壁へと続く絶壁を見上げたときのこと、石と同じ色をした"何か"がうごめくのを見たのだ。よく見ようと目を凝らすと、"何か"は石と寸分たがわぬ姿に戻ってしまうのだった。
 母親の葬儀を終えた夜、女友達ジュディと旧交を温めるべく、彼女の家へ徒歩で向かうミリアム。「魔物道」に足を踏み入れた彼女を待つものとは…。

 子供の頃の「理由が定かでない恐怖」を描いた作品。バーカーに魔物の組み合わせだと強烈なスプラッタ描写を思い浮かべがちだけど、本作は静謐な怖さをたたえた小説に仕上がっている。
 イギリスには過剰な描写を用いるナスティ(気色悪い)派と呼ばれるホラー作家がいる。日本でもジェイムズ・ハーバート、ショーン・ハトスン、スティーヴン・ローズなどの諸作が翻訳済み。バーカーも『ミッドナイト・ミートトレイン』でナスティホラー作家として売り出されたけど、ナスティ一辺倒ではない彼の懐の深さが伺える本作は広くオススメできる。

【サイト登録日】2008年3月19日 【ジャンル】怪物・幻想

▽メモ1ナスティ派の作家について

ナスティ派と呼ばれる作家でバーカーの次に翻訳冊数が多いのは、たぶんジェイムズ・ハーバートでしょう。
巨大鼠のロンドン蹂躙を描く『鼠(The Rats,1974)』[サンケイ出版/絶版]、人を狂わせる霧を描く『霧(The Fog,1975)』[サンケイ出版/絶版]、千里眼を持つ教師と殺人鬼の対決を描く『ムーン(Moon,1985)』[早川文庫/絶版]、ナチスとモサド闘士のロンギヌスの槍争奪戦を描くオカルトホラー『聖槍(The Spear,1978)』[早川文庫/絶版]など多数ありますが、その大半が絶版となっています(2010年4月現在)。