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『ナイト・フライヤー』文庫表紙

『ナイト・フライヤー』文庫表紙

パンの大神

The Great God Pan,1988

作:M・ジョン・ハリスン(白石朗訳)

Written by M.John Harrison

短編45ページ/『ナイト・フライヤー』所収/新潮文庫

Prime Evil,1988

若き日の出来事に怯え、破滅する女性
パンの大神が人間にもたらすものとは…

 わたしとルーカス、アンがまだ若かった頃、友人スプレイクに手引きされ、野原で"ある"ことを行った。それが何を意味するのかはいまだにわからないし、のちの人生に影響を及ぼすことになるとは、誰も考えていなかったのだ。
 癲癇の発作を抑える薬のせいか、ふさぎがちで依怙地なアン。発作の様子に耐えられなくなって離婚したルーカスは、それ以来アンとの仲介役としてわたしを頼るようになった。
 今回もルーカスに懇願されたわたしは、都会から遠く離れた地で独り暮らすアンを訪ねる。かつては美しい少女だったが、20年経ったいま、実年齢以上に老けこみ、荒んだ生活を送っている。アンは野原での出来事に怯えていたのだ。
 遠い昔に終わった話だ、と説得を試みるわたしだったが、その夜のこと、キッチンの窓から怪奇なものを目撃する。ニヤニヤと笑う全裸の男女が絡み合いながら空中に浮かんでいたのだ。これは幻覚なのか、それとも…。

 本作が『パンの大神』から借用した設定は、「最初に人間になった瞬間に失ってしまった、この世界を感覚的に直接感知する能力をも象徴しているに違いない」(p271)という部分。見えないものが見えてしまう力。
 世の作品からインスピレーションを得て、解釈を加え、自作に生かすことは作家として正しい姿勢だと思う。文学や絵画は模倣から始まる芸術だし。
 ただ、元作品から骨子だけを借り、結果としてヒステリックにわめく男女、知覚できる未知の存在(燐光を放って空中で絡みあう全裸の男女(p253)、大きな猿のような怪物(p270))だけではね。もっと工夫が欲しかった。

【サイト登録日】2008年3月25日 【ジャンル】悪魔・怪物・異世界