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『ナイト・フライヤー』文庫表紙

『ナイト・フライヤー』文庫表紙

オレンジは苦悩、ブルーは狂気

Orange Is for Anguish,Blue for Insanity,1988

作:デイヴィッド・マレル(浅倉久志訳)

Written by David Morrell

短編61ページ/『ナイト・フライヤー』所収/新潮文庫

Prime Evil,1988

天才画家の絵に秘められた狂気の真実
ブラム・ストーカー賞受賞の傑作短編ホラー

 19世紀末の画家ファン・ドールン。万物には差異がないことをうたい、強烈な色彩で樹木や大空が混然一体となった風景画を多数描いた。今日ではその天才の絵画に数百万ドルの値がつくが、当時の画壇に認められることはなく、窮乏の中、ついに発狂して絵筆で自らの目を深く刺し貫き、不遇の生涯に幕を引く。
 画家志望のわたしと美術史家志望のマイヤーズは、大学院でともに学ぶ親友だった。弁舌が立ち、ちょっと変わり者のマイヤーズが、学位論文にドールンの研究をするという。あの絵には誰も発見していない秘密があるはずだ、というのだ。
 研究に没頭するあまり、ついには体調を崩して帰郷することになったマイヤーズ。そして1年の月日が経つ。
 画家としての才に見切りをつけ、ニューヨークの広告代理店で商業美術家として勤務していたわたしにマイヤーズから連絡が入る。ドールンの絵の秘密がわかったという。その日を境に新たな狂気が幕を開ける。

 物語の発想、小説としての展開、明晰な文章、底なしの絶望と強い意思を表現する結末。20世紀ホラー文学を見渡しても屈指の短編小説だと思う。海外ではLong Fiction(中編ってこと?)として分類されてるみたいだけど。
 何回も読んでいる好きな作品だからこそ、余計に残念だと思うところもある。ラスト近くに登場する「隕石」やら「地獄の蓋」といった理由付けの部分。ここは陳腐というか、蛇足としか言いようがない。
 作品には純粋な恐怖が十分に練り込まれているのに「いえね、その恐怖の理由ってのが」と講釈されるようなもの。ありがた迷惑という気がする。

【サイト登録日】2008年3月25日 【ジャンル】絵画・悪魔

▽メモ11988年度第2回ブラム・ストーカー賞Long Fiction部門受賞作

▽メモ2ファン・ドールンの最後の作品である自画像(p316)

短い、薄くなりかけた頭髪、おちくぼんだ目、頬がこけ、青白い皮膚、もじゃもじゃのあご髭

▽メモ3絵の描写(p294)

風景にすっかり溶け込んでいる5ミリにも満たない顔の群れ。口は黒い空洞、鼻はぎざぎざの裂け目、目は絶望的な暗い穴。苦悶に満ちた悲鳴をあげているようだ。

デイヴィッド デビッド デビット