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『ナイト・フライヤー』文庫表紙

『ナイト・フライヤー』文庫表紙

レダマの木

The Juniper Tree,1988

作:ピーター・ストラウブ(酒井昭伸訳)

Written by Peter Straub

短編54ページ/『ナイト・フライヤー』所収/新潮文庫

Prime Evil,1988

43歳になった作家のわたしは回想する
7歳のぼくが体験した倒錯の性的な日々を…

 7歳のぼくは、両親や双子の弟たちとは浮いていることを自覚していた。
 ひろあげたガラス片で喉を切り裂いて死を呼び込んでみようか、と考えることもあれば、誰にも見えない、気づかれない場所のようなものになりたいと夢想することもある。
 夏休みになると毎朝決まって父親から25セント貨を2枚もらう。ベビーシッターへの支払いとランチ代。大工の父親はいつも機嫌が悪い。しじゅうお金に困っていること、期待を応えられないぼくにも原因があるようだ。
 ベビーシッターの家には行かず、映画館<オルフェウム・オリエンタル>でスパイ映画や犯罪映画に熱中するぼく。
 そんなある日、酒臭い男が近づいてきて、友達になりたいという。
 まばらな観客。上映がはじまり館内が暗くなる。股間から一物を取り出して触るように強要する男。ぼくをぼくから盗もうとしている…。

 異常性というか、人の業のようなものを描いた一人称小説。気がふさぐようなストラウブ独特の暗さは健在だが、ホラーでくくる作品ではない気も。
 語り部である7歳の主人公は、変態オヤジのオモチャにされると知りつつ映画館へ通う。暗い秘密を愉しむ自分も実は異常なのではないか。
 一般的なホラー小説なら猟奇殺人を起こすトラウマとして描くんだろうけど、本作では異常な体験を事実の1つとして甘受している。
 心の暗さ、異常のたねは誰もが持っているけど気づいている人は少ない。わたしは気づいているから作家になれた、ってストラウブの自伝なの?

【サイト登録日】2008年3月29日 【ジャンル】幻想・幼年期

▽メモ11988年度第2回ブラム・ストーカー賞Long Fiction部門候補作

▽メモ2原題「Juniper Tree」について

Juniper Treeとは、ヒノキ科ネズ(杜松)のこと。漢方薬やジンの香り付けとしても使われる。作中では「フェアリー・テールの世界では、ばらばらにされ、杜松の木の下に埋められた子どもたちは、起きあがり、口をきき、もういどどもとのようにひとつのからだになれるという」(p359)という象徴的な使われ方をしています。

▽メモ3作中に上映される映画

『恐喝の街 Chicago Deadline(1955)/アラン・ラッド主演』

ストラウヴ