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『ナイト・フライヤー』文庫表紙

『ナイト・フライヤー』文庫表紙

死者との物語

Spinning Tales with the Dead,1988

作:チャールズ・L・グラント(黒丸尚訳)

Written by Charles L.Grant

短編24ページ/『ナイト・フライヤー』所収/新潮文庫

Prime Evil,1988

清澄な小川で釣り糸をたれる父親と息子
森から出現した女性はいったい何者なのか?

 子供の頃から通う小川で釣りに興じるジェリイ・ダウン。老境に入ったいまでも旧友ルーニイとともに釣りを日課としている。
 ジェリイの隣に座っているのは、せいぜい9歳か10歳くらいの息子イーフリアム。「あのなぁ、イーフ」とジェリイ。「昔々、わしは大統領になろうと決めた。ただ、コーディのヤツのほうがより多くの州を獲得しちまったのさ」
 一等航海士だった頃、ショウビジネスに身を置いていた頃。ありもない父親のホラ話を退屈そうに聴く息子。
 すると対岸の森から一人の女性が現れるや、ドレスを下ろして乳房を露わにし、川面を叩いて水を舞い上がらせる。白い指。まるで骨のような白さ。
 毎度のことだ、とジェリイ。しかし、その視線は乳房を追う。手に柔らかく温かい感触が思い出される。「わしは愛していたんだ」とジェリイ。
 小川、親子、女性、旧友。奇妙な光景に潜むおぞましい秘密…。

 牧歌的な風景と異常な者の共存。これが本作の奇怪さだ。
 死者の幻影に苦しめられる男は、小川に行けば同じ目に遭うことがわかっていながら毎日通う。途中まで読んだとき、罪への呵責か、それとも殺してから気付いた一種の愛情ゆえか、と思った。
 最後の一行を読み、感想がガラっと変わった。
 男は犯した罪を自覚していながら、手にかけた妻や息子の幽霊に対して否定しつづける。きっと幽霊に「あなたはやってないわ」と言ってほしい。男は死ぬまで小川に通い続けるんだろうね。心の闇は深い。そこが怖い。

【サイト登録日】2008年4月5日 【ジャンル】幻想・幽霊