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『ナイト・フライヤー』文庫表紙

『ナイト・フライヤー』文庫表紙

アリスの最後の冒険

Alice's Last Adventure,1988

作:トマス・リゴッティ(白石朗訳)

Written by Thomas Ligotti

短編31ページ/『ナイト・フライヤー』所収/新潮文庫

Prime Evil,1988

年老いた女流作家が見る数々の幻
人生の終焉を描くダークファンタジー

 父が愛してやまなかった鏡の国のアリス。強く影響を受けた私は、児童文学作家として永遠の少年「プレストン」シリーズを著し、いまでも大人気を博している。
 しかし、プレストンという天真爛漫な人物を私の想像力だけで描けるはずもない。これはすべてアリスが描いた物語なのだ。
 年老い、酒におぼれ、作家として隠居している自分。父も、母も、郷里の旧友も死んだ。過去は重く、暗い。
 去年のいまごろ、自分の命をあと1年に限ってほしいと思っていた。そのときから不明瞭な幻を見るようになる。いや、本当は何も見ていない。想像力で作りだしただけ、と知っている。
 あれから1年。ハロウィンの恒例行事としていた地元学校での朗読会も辞めた。
 部屋から空を見上げる。月の相が逆に見える。酒の味が変わった。まるで裏返しになったように。私は、いったいどこへ向かうのだろう。

 父親が愛したアリス。アリスになりたいと思っていた少女は成長し、さまざまな経験を積んで大人になってしまった。それは父への裏切り。
 死を迎えるラスト、彼女は魂の悲鳴をあげる。「なにも見えない。助けて、お父さん」。いびつな愛情を支えにしてきた人生が幕を下ろす。切なくて、ちょっとグロテスクな作品に仕上がっている。
 メタフィクションを意識した作品だけど、文章が達者でないというか、構成がしっくりこないというか、物語をむだに混乱させているだけという気もする。翻訳というフィルタのせいかもしれないけど。

【サイト登録日】2008年4月5日 【ジャンル】幻想