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『血の本3:セルロイドの息子』文庫表紙

『血の本3:セルロイドの息子』文庫表紙

魂の抜け殻

Human Remains,1984

作:クライブ・バーカー(宮脇孝雄訳)

Written by Clive Barker

短編82ページ/『血の本3:セルロイドの息子』所収/集英社文庫

Books of Blood No.2,1984

人間そっくりに化ける古代ローマの呪われた人形
アイデンティティを失っていく男娼の末路

 美貌の男娼ギャビンは、有閑未亡人、紳士たちに夢見の一夜を提供しているが、容姿の衰えは隠せない。顧客のいずれかがと結婚し、この商売から足を洗おう。計算高く考えているものの、その機会が訪れぬまま、時間だけが過ぎていった。
 今宵も街頭に立ったギャビンは、金回りの良さそうな初老の男に声をかけ、彼の部屋に行く。バスルームに忍び込んだギャビンは、濁った水の浴槽に沈めてある木製の彫像が目撃するが、問いただす間もなく部屋を追い出される。
 数日後、身に覚えのないことで3人のポン引きにリンチを受けるギャビン。ナイフが顔に迫ってきたとき、暗がりから現れた男が3人を惨殺する。
 男の顔を見て愕然とする。あの木製の彫像ではないか。しかも、容姿が整いつつあり、自分に似ているようだ。慌てて逃げ出すギャビン。
 見た人間とそっくりに成長していく古代ローマの彫像は、他人の顔を奪い、魂を抜き出し、人生を乗っ取って生きながらえてきたのだった。

 自分では見いだすことのできなかった人生の価値。対する彫像は、自分のものだった人生に大いなる喜びを見いだしている。その様子を見た主人公は「偶然の神に仕える旗持ち」と自らをあざ笑い、きっと野たれ死ぬまで漂白の人生を送っていくのだろう、と予感させる。
 相手を殺害して乗っ取りを完成させてきた彫像ですら、主人公には手をあげない。生死さえ意味のない男に手をあげる必要はさらさらない。
 人生を他人に預けることで自分の存在が確かなものになる。すごく怖いのと同時にわびしさがひしひしと伝わってくる作品だ。

【サイト登録日】2008年7月19日 【ジャンル】人形・呪い・なりかわり

クライブ クライヴ バーカー ヴァーカー