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『血の本5:マドンナ』文庫表紙

『血の本5:マドンナ』文庫表紙

バベルの子供たち

Babel's Children,1985

作:クライブ・バーカー(宮脇孝雄訳)

Written by Clive Barker

短編54ページ/『血の本5:マドンナ』所収/集英社文庫

Books of Blood No.4,1985

世界の命運は蛙レースで決められていた?
人間の愚かしさをシニカルに描く暗黒おとぎ話

 生来の反骨精神のためか、観光名所でもないキスノス島(ギリシャ)へ旅行にやってきたヴァネッサ・ジェイプ。
 レンタカーで島巡りをしていると、悲鳴と銃声を耳にする。冒険心をくすぐられ、車を降りて追跡するヴァネッサだったが、道に迷ってしまう。
 疲労困憊の末、修道院のような場所にたどり着くが、修道女の姿をした武装兵に捕らわれて尋問される。疑いは晴れたが、施設に軟禁されるヴァネッサ。
 危険な患者を収容する精神病院だと聞かされたが、見覚えのある老人から驚くべき話を聞かされる。自分はノーベル賞を受賞したハーヴィ・ガム教授であり、20年前に構成された委員会のメンバーだ。さまざまな脅威から人類を救うため、我々選ばれたエリートたちが、ここで世界の重要な政治決定を下してきたのだ。
 半信半疑のヴァネッサだが、自由を渇望する老人たちにほだされて脱走を決意。夜の闇へ車を走らせるが、道を誤って崖下へ転落してしまい…。

「あんたが撃つならこっちも撃つ」と核兵器で牽制しあった冷戦時代。天秤にかけたのは人類の存亡。どんなホラー小説とて、これほど狡猾で陰湿なからくりは描けないでしょ。
 それはさておき、冷戦まっただ中で執筆された本作は「誰も決断できない」という冷戦構造の愚かさを嗤い、世界の命運を握っていた机上のエリートたちを嗤い、その決断に盲従するだけの各国首脳を嗤う。人間を嗤い、時代そのものを嗤う。極めつけに蛙レースを使って世界の命運は決められていた、と描いてみせる。『血の本』シリーズでもっとも冷笑に満ちた作品かな。

【サイト登録日】2008年9月3日 【ジャンル】幻想

▽メモ1科学誌『OMNI』に掲載

SF&スーパーナチュラル小説を多数掲載していた科学誌『OMNI』で紹介された。

クライブ クライヴ バーカー ヴァーカー