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リンゼイと赤い都のブルース
Lindsay and the Red City Blues,1980
作:ジョー・ホールドマン(広瀬順弘訳)
Written by Joe Haldeman
短編31ページ/『闇の展覧会 敵』所収/ハヤカワ文庫NV
Dark Forces,1980
灼熱の地で体験する夢幻のごとき出来事
作者のモロッコ探訪が濃密に練り込まれた幻想譚
ワシントンD.Cの大手化学用品会社に勤務するセールスマン、スコット・リンゼイは休暇を利用してヨーロッパ旅行にやってくる。
バカンスシーズンゆえ、どこもかしこも混雑しており、うんざりしていたリンゼイは、「旅行客がほとんどいない」の噂を頼りに空路モロッコを目指す。
カサブランカに着いたリンゼイは、旅行案内ガイドの宣伝文句<赤い都マラケシュは、サハラ砂漠を旅する者にとって最後のオアシスとなる>に惹かれ、マラケシュに逗留。たしかに観光客は見かけないが、猛烈な暑さのうえ、ホテルのクーラーは役立たず。しかたなく街へ散策するリンゼイは、現地の少年に声をかけられる。マラケシュ最大の露天市場ジェマー・エル・フナを案内するという。
好奇心も手伝い、市場に入っていくリンゼイに少年がいう。「ねえ、女はいらない?」。空港で買ったコンドームを持てあましていたリンゼイの欲情が高まる。
異国の太陽に下、彼の悪夢はここから始まる。
気だるい猛暑、危険な気配。母国の常識が通用しない異国をさまよう主人公。小さな商店や露店がビッシリと並ぶ市場の奥へと進んでいくごとに危険も増していく。こういうところへ置き去りにされたら、さぞかし不安だろうな、と想像したらゾクゾクしてきた。
殴る蹴るのリンチを受けた主人公が、その経験と痛みによって土地との結びつきを強めた、と錯覚するシーンも怖い。捨て鉢な昂揚ぶりが寒々しい。
ホラー短編らしく呪術めいた仕掛け、クライマックスが用意されているけど、淋病の代理妊娠には苦笑い。







![『闇の展覧会[新装版]1 敵』文庫表紙](../images/bookcover/ws011a-sam.jpg)